#54 事件の結末
ミキの次にヒトミに休憩に行って貰い、最後に俺が休憩に入った。
仮眠するつもりだったのでスマホでアラームを設定した上で、もし30分経っても戻って来なかったら電話で起こして貰う様にお願いして、自分の部屋に戻るとベッドで直ぐに横になった。
色々悩んでて、眠れるか自信が無かったけど、相当疲れていたのか結局直ぐに寝落ちしてしまった。
◇
スマホの通話着信の音で目が覚めた。
寝過ごしてしまったと慌てて通話に出ると、ミキからで『今、飯塚さんのお母さんが来たよ』との連絡だった。
ベッドから起き上がると、俺の部屋に置いていた飯塚シズカのスマホとモバイル、盗聴器と受信機も持って飯塚シズカの部屋へ戻った。
玄関扉を開けて、「お邪魔します」と声を掛けながら玄関に入ると、飯塚シズカの母親らしき女性が玄関の俺のところまで駆け寄って来たので思わず身構えると、勢いよく頭を下げられ「ご迷惑かけてすみませんでした」と謝られた。
「と、とにかく、まずはお話ししたいんで、上がらせてもらっていいですか?」
「ええ、どうぞ」
靴を脱いで室内に上がると、部屋の中央に飯塚シズカが
飯塚シズカの正面に向かい合う様に何となく俺も正座すると、母親は飯塚シズカの横に同じように正座したので、持ってきた物を前に置いて説明を始めた。
以前から盗難の被害に気付いていたけど、犯人までは分かっていなかったが、今日ベランダに忍び込んでいるのを見つけて捕まえたこと。
その後、色々聞き取りしたり本人の許可を得て部屋を調べさせて貰って、これまでのことを把握していること。
その中には盗難だけでは無く、盗聴や盗撮もしていて、既に本人も認めていること。
目の前に置いたスマホや盗聴器などがその証拠品であることも説明した。
俺が1つ1つ説明する度に、母親は泣きながら「申し訳ありませんでした」と頭を下げていた。
飯塚シズカはその横で黙ったままで、二人の様子を見ていると、母親のことが可哀そうになってきた。
そこまで話したところで、父さんから電話がかかって来たので電話に出ると、今マンションに到着したとのことだったので、ヒトミに外まで迎えに行って貰った。
ヒトミが父さんを連れてきてくれたので、玄関まで出迎えに行き「遠いのに、ごめん」と謝ると「気にしなくていいから」と言ってくれたので、俺の部屋じゃないけどと言いながら上がって貰った。
父さんにも座って貰い、先ほど飯塚シズカの母親に説明した内容をもっと簡潔に父さんにも説明をすると、父さんは「それで、ヒロキはどうしたいんだ?」と俺に質問してきた。
俺が答える前に飯塚シズカの母親が「ご迷惑かけた分は弁償致します。 警察へ通報するのでしたらそれにも従います」と、父さんに向かって答えた。
「お母様のお考えは分かりました。ですが、息子ももう大人ですし、どうするかは自分で決めさせたいと思いますので」と断り、俺の考えを再度訊ねて来た。
「俺としては、警察にも大学にも言うつもりは無いです。 こんなことが公になったら、被害者の俺は好奇の目で見られるし、飯塚さんと同じC大で被害者の妹であるヒトミだって同じように色々と嫌な思いをすることになるかと思いますので、これ以上は騒ぎを大きくはしたくないと考えています」
「それで本当に良いんだな?」
「うん。ただ、お互いこのままお隣同士でこのマンションに住み続けるのは流石に不安なので、俺か飯塚さんのどちらかはココを引っ越すべきだとは思う」
今日俺が悩みに悩んで出した結論を説明すると、飯塚シズカの母親が「この子は大学を辞めさせて、連れて帰ります」と言い出した。
うーん、大学辞めさせるのはちょっと可哀想かな…と思いつつも、母親にしてみれば警察に通報されないだけでもありがたいんだろうな、と思い直した。
しかしココでヒトミが「あの、ちょっといいですか?」と口を挟んできた。
父さんが「ヒトミも何かあるのか?」と応じると、「浪人して漸く合格出来た国立大学なんですよね? だったら休学扱いにして、しばらく休んでから復学されたらどうですか?」と提案した。
「それは飯塚さんのご家族の中で決めることだから」
「うん、分かってる。 ただこちらとしては、大学を辞めるまでは望んでいませんっていうだけの話で。 兄ちゃんはどう思う?」
「まぁそうだね。 例えば刑罰を受けた場合に、どれくらいのものになるかは分からないけど、それに相当するくらいは実家で反省してもらった方が良いかもね。 その後、大学へ復学する気があるのなら、今は退学じゃなくて休学のが良いのかな」
結局、退学するかどうかは飯塚さん親子で決めるということで話は終わり、後はスマホやモバイルの処分を確認(スマホはみんなが見ている前で破壊。モバイルは初期化。今後しばらくはスマホを持たないことを約束)して、再度謝罪を受けて、その日の内に飯塚シズカは母親の運転する車に乗せられ、実家のあるB県に連れ帰された。
◇
話合いが終わり、俺の部屋に移動してから改めて父さんにお礼とお詫びを伝えると、父さんは俺とヒトミよりも先にミキに向かって「色々と助けてくれてありがとうね。 ミキさんにご迷惑かけてしまったからご家族にお詫びしたいんですが、今日はもう時間も遅いから明日にでもご自宅に伺っても良いですか?」と話し始めた。
ミキの方はビックリした様子で「お詫びなんて大丈夫です!ヒロくんに止められてたのに私が勝手に暴走しちゃっただけですから!」と答えた。
それでも父さんが一度お詫びに伺わせて欲しいと頼むと、「ヒロくんのストーカー被害の話が親の耳に入るのは私としても困るので、本当に大丈夫です」とミキから断られ、漸く父さんは諦めて「本当にすみませんでした。それとこれからもヒロキとヒトミのこと、よろしくお願いします」と再びミキに頭を下げてくれた。
今朝の段階ではこの日ミキは俺の部屋に泊まる予定だったけど、流石にこの状況だし父さんも居るので、今夜は一旦帰って貰うことになり、ヒトミと父さんに留守を頼んで、自転車でミキを自宅まで送って行った。
ミキの自宅に到着して改めて今日のお礼を伝えると、ミキは「ヒロくんこそ、色々辛かったのに一杯頑張ったよ」と言ってハグしてくれた。
「ミキが傍に居てくれたからだよ。 落ち着いたら今度こそゆっくりお泊りしに来てね」
「うん。 そだ、明日もヒロくんちに行くから、明日こそ泊まるね」うふふ
「分かった。 じゃあ父さんたち待ってるから帰るね」
「うん。おやすみなさい」
「おやすみ」
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