#48 妹の指摘と懸念
ローテーブルでは無くキッチンの方のテーブルでスタンバった。特に理由はない。なんとなくだった。
いつもは向かい合わせのイスを横並びにして、そこにミキと肩寄せ合う様に座った。
ミキがスマホをテーブルの中央に置いて、スピーカーモードに切り替えてからヒトミへの通話のアイコンをタップしコールが始まる。
朝食の時には点けていたテレビは今は消してるし洗濯物も終わっているので、いま室内ではスマホのコール音だけが聞こえている。
6~7コール程で漸くヒトミが出た。
『もしもし、ヒトミです』
『ヒトミちゃん、急に通話かけてごめんね?』
『いえ、ヒマしてたんで大丈夫です。ミキさんのこと気になってたんで、私からも電話しようか悩んでたところでしたし』
『色々心配かけてごめんな。とりあえず、ミキとはちゃんと仲直り出来たからね。ヒトミのお陰で助かったよ』
『あ、兄ちゃんも一緒なんだ』
『うん。俺もミキもヒトミに色々心配かけちゃったしお礼言いたくてね』
『そっか。 あれから丸一日二人とも連絡無くて心配だったけど、連絡無いってことはやっぱり拗れちゃったのかな?って連絡し辛くて、気になるけどどうしようって悩んでたところだったの』
『ごめんねヒトミちゃん!相談乗って貰ったのにまた心配かけちゃって。 仲直りしたら今まで以上にラブラブで2連泊してイチャイチャしてたの。それで今日になって漸くヒトミちゃんにお礼言わないと!って思い出して、さっき慌ててメッセージ送ったの。ホントごめんね?』
「いや、ヒトミに向かってラブラブとか言う必要ないでしょ?恥ずかしいから止めて欲しいんだけど?」
『兄ちゃん、聞こえてるよ? 別に今更だし気にする方が格好悪く見えるよ?』
『ね! 聞いてよヒトミちゃん! ヒロくん、私のこと尊敬する!とか惚れ直した!とかすっごい感激しちゃうようなこと言ってくれたと思ったら、次の日には、押しつけがましい!とか超体育会系お姉さん!とか言うんだよ? ちょっと酷いよね?』
またしても二人で俺のことをネタに盛り上がり始めた。
6月にヒトミが泊まりに来た頃に比べ、3人で俺の実家に旅行したりして俺の方も苦手意識が薄れてきたと思っていたけど、やっぱりこういうのはまだまだ苦手だ。
ミキが興奮気味に仲直り出来た経緯や俺に言われたことなんかを説明していたので、俺は横で黙って聞いてるだけにした。
ヒトミの方も、『へーそうなんですか』とか『なるほどなるほど』って感じでイラックスして相槌打ってて、ミキに対してはヒトミなりにフレンドリーに接している様に見えた。
俺とミキの話題が終わると、今度はヒトミがこっちに戻って来てからまた遊ぼうって話題になったので、俺からも『ヒトミに相談したいことがあるから、こっちに戻ったら聞いてくれる?』と打ち明けた。
『相談は良いけど、またストーカーの話?』
『うん。また被害にあった。 それで、ミキが新たな推理をしたんだけど、犯人はお隣さんじゃないかって』
『んんん?ちょっと待って、お隣さんって女性なの?』
『そうだよ。ヒトミと同じC大の1年らしい』
『そうだったの!? ちょっと待って下さい…えーっと…一旦通話切るね』
『え?ちょ、どした急に?』
プーッ、プーッ、プーッ
「切れちゃったね」
「うん、急に慌てだしたね。向こうで何かあったのかな?」
二人で顔を見合わせて、どうしたものか?と考えあぐねていたが直ぐにミキと俺のスマホに同時にメッセージアプリの通知が届いた。
お互いメッセージを確認すると、『ちょっと気になることがあるので、通話止めてトークアプリのチャットで続けましょう』と着ていた。
俺もミキも『了解』『おっけー!』と了承すると、ヒトミはコナンくんモードで色々話してくれた。
6月以降、ヒトミなりにストーカー犯罪の事を色々調べていたこと。
調べていた中には、過去にマンション住まいで隣人がストーカーだった事例もあったこと。
隣人だと、盗聴等が簡単に出来てしまうこと。コンクリートマイクや壁に穴開けてマイク仕込むとか。
コンクリートマイクや盗聴器と受信機などは、簡単にネット通販で買えてしまうこと。
実はヒトミも隣人を疑う気持ちが僅かにあったけど、自分でもどうしてだか分からないが隣人が男性だと思い込んでいた為、強く疑いの目を向ける程では無かったこと。
それと、今回ストーカーは隣人かも?と聞いて一番に盗聴のことが思い浮かび、通話は不味いと思って慌ててスマホでのトークに切り替えて貰ったとのことだった。
俺からも、お盆休み中に盗難被害は無かったけど忍び込まれた痕跡があったことを説明した上で、隣人を疑うに至った根拠や隣人に関して知ってる情報として、C大1年でB県F市から来ている事や、学部学科は不明だけど名前が『飯塚シズカ』と言うことまで把握出来たので、ヒトミがこちらに戻ったら大学の方で調べられないかお願いしようと思ってたことを説明した。
そしたら、ヒトミは飯塚シズカのことを知っていた。
但し、同じ学科というだけで会話等はしたことは無いそうだ。
講義室でも滅多に近くの席に座ることは無く(ヒトミはいつも前の方で真面目に講義受けてて、飯塚シズカは隅っこの方で一人で大人しくしてるらしい)、知り合いとは言えない程度の顔見知りとのこと。
これらの話をスマホのトークで2時間以上ぶっ通しで続けた。
既にお昼を過ぎていたし、色々ショッキングな内容もあって気疲れしてもいたので、一旦お昼休憩をすることにした。
立ち上がって背伸びしながら「さて、お昼は何食べよっか?」とミキに尋ねるけど、ミキは俺に視線を向けて困った様な顔しながらも返事をしない。
「どしたの?疲れちゃった?」
再び質問すると、ミキは立ってる俺の袖を引っ張り座らせると、抱き着く様に近づき、俺の耳元に顔を寄せて右手でガードするようにして、内緒話をする様に小声で囁いた。
「(盗聴されてるかもって思ったら、声出して話すのが怖い)」
「確かに怖いってのはあるけど、もう今更だしなぁ」
「(どんな話聞かれてたのかも分かんないんだよ?)」
「そうだけどさ、でも昨日の夜はミキ自分で『ラブラブにエッチしてるの見せつける!』とか言ってたじゃん。なのに盗聴は怖いの?」
「(それとコレとは違うの!そういうことじゃないの!)」
ミキは小声のまま強く訴えてくるが、マジでどう違うのか俺には分からない。
「なら、とりあえず昼メシ食べたら外に出る?どこか別の場所で夜まで過ごす?」
「……(ココで、声出さないで、静かにイチャイチャする)」
ミキは困った様な表情のまま、少し悩んでから小声でそう答えた。
「盗聴怖いのにイチャイチャはしたいの?」
無言で頷く。
「分かった、じゃあそうしようか。 とりあえずメシね」
そんなやり取りをしている間に、ヒトミから『予定変更して明日の午前中にそっちに帰るね。 詳しいことは明日にでも直接会って相談しよう』とトーク画面に書き込まれていた。
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