#20 友人達の反応
「ん~?トランクス2枚、傘1本、ジョギングシューズ1足、グラス1個、歯ブラシ1本?」
「ナニこれ?」
三島と山田は俺が差し出したメモ(盗難の被害リスト)を見て、二人とも首を
予想通りの反応だ。
その反応から、やはり二人は盗難とは無関係だと判断した。
あくまで確認作業みたいな物だし、本題はストーカーに関する相談なので、さっさと話を進めることにする。
「なんだと思う?」
「う~ん、キャンプとか旅行に持って行くリスト?」
「ここ最近、俺の部屋から無くなった物のリスト」
「うん?どーゆーこと?」
「5月に洗濯機に入れて置いた洗濯前のトランクスが消えて、それ以外の物は先週無くなってることに気が付いた」
「んんん?言ってる意味分からんぞ?」
三島は理解が追い付かないみたいだが、メモを見つめていた山田が口を開いた。
「つまり、誰かが盗んだと?」
「うん、その可能性が高いと思ってる」
「それで、俺か三島のどちらかが犯人だと疑っとるのか?」
「違う違う、犯人の目星とかは全然付いてないけど、妹が言うには、ストーカーが居るんじゃないかって」
「はぁ!?ストーカー???」
「正直に話すと、最初はさ、彼女とか妹とか三島と山田も疑ったのよ。先週俺の部屋に来てたのがこの4人でさ、特に彼女なんてこの部屋の合鍵も持ってるから一番疑ってたんだけど結局違ってて、同じ様に妹も確認したけどやっぱ違ってて、それで彼女と妹にも相談したの。 そしたら妹が「金目の物盗まずに身に付けてる物とか盗んでるから、ストーカーじゃないか」って。 三島と山田を最初に疑ったのもウチに来てたって言う理由だけで本気で疑ってた訳じゃないし、流石に男のストーカーだなんて思って無いから。 気分悪くさせたのなら謝る」
「なるほど。別に俺たちの行動とか態度が怪しいから疑ってた訳ちゃうんやな?」
「勿論。二人ともそういうことする様なヤツじゃないと思ってるし、信用してるからこそ相談したいと思った訳で。 最初はさ、4人のウチの誰かだったとしても話合って穏便済ませるつもりでもっと簡単に終わることだと思ってたのよ。 でもストーカーじゃないかって話になって、心当たりが全然無くてさ、彼女と妹の前では強がって見せたけど、やっぱ怖いし、本当は今日鈴木にも相談したかったけど、思わぬ話が出て来てそれどころじゃなくなっちゃたから。 それでも二人には話聞いて貰いたいって思って」
相談しようと考えた理由の他に、二人にも5月にトランクスが無くなった時の状況から、先週の状況なども説明した。
二人が喫煙した後のベランダの施錠のことは話さなかった。
それを話してしまうと、まるで「施錠忘れてストーカーに忍び込まれたのはお前らのせいだ」と俺が考えていると勘違いされると思ったから。 俺の部屋の施錠はあくまで俺の責任で、先週木曜だって、出かける時に最後自分で確認するべきだった話だ。
「今の鈴木にはこういう話はし辛いな」
「確かに自分のことで手一杯で、友達の相談なんて乗ってる余裕ないだろうな」
「それで、ストーカーに心当たりが無い言うてたけど、物が盗まれた以外で気になることとかは無かったん?」
二人とも俺に同情してくれたのか、このまま話を聞いてくれそうなので、相談を進めることにした。
「気になること…、鈴木の彼女が元カノだった? は、流石に偶然か…、あとは…」
「女の子に告白されたことがあるとか、手紙とかメールにメッセージが良く来る人とか、SNSでよく絡んでくる人とかどーなん?」
「うーん、大学入って以降は告白はゼロだな。あと、彼女と妹以外でメッセージのやり取りはたま~に地元とか別の県外出てる高校の時の友達くらいで、SNSはそもそもやってないし、手紙の類も今の所は見てないな。 っていうか、最近郵便受けの中身全然見て無いな」
ウチのワンルームマンションは、1階の階段手前と各部屋の玄関扉の2カ所に郵便受けがある。1階は手紙等の郵便物やチラシなどが入れられ、各部屋玄関扉は新聞紙やメール便などが入れられる。1階の郵便受けは、毎日出先から帰った時に中を覗いて確認するが、玄関扉の郵便受けは何か大きい物が入れられて投入口に挟まってる時以外には見ることは無かった。
その事に気が付いてから玄関に移動すると、扉内側のボックスを見た。
室内側からはボックスは開けなくても中に何か入っていることが分かる様にフタの一部がメッシュ状になっているので、まずはそこから中を確認した。
今の今まで気が付かなかったが、中に何か入っている。
「ん?なんか入ってるわ」
ボックスをカパッと開くと、電気使用量のレシートみたいなのと、切手の貼ってない白い封筒が1通入っていた。
封筒を取り出して、表と裏を確認するが、何も書かれていなかった。
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