おじいちゃんが亡くなったのに、忙しすぎて悲しむ暇がないんですけれども
ねこ沢ふたよ@書籍発売中
第1話 突然のこと
私のスマホが鳴ったのは、なんの変哲もない穏やかな午後のことだった。
昼休みもそろそろ終わるころ、午後の講義が始まる前。
生協の食堂を出て、レポートの提出期限の話をしながら、友達とのんきに歩いていた時だった。
電話に出れば、お母さんの涙声。
「おじいちゃん……亡くなったのよ。今」
信じられない単語。
私の祖父はとても元気な人。一週間前も、元気に自転車に乗って走り回っていたのに。亡くなっただなんて、そんな馬鹿な話がある訳がない。
「え?」
聞き間違えたのかと思って、私は聞き返す。
「亡くなったの。お葬式の準備とかあるから、なるべく早く帰ってきてね」
母は、確実に「亡くなった」と言っている。
「お、お母さん……今どこ?」
「今は、北町病院」
北町病院……。大学から近い。
きっと、何かあって、救急車でおじいちゃんはその病院に運ばれたんだ。
「い、今から、すぐ、すぐに行くから!!!」
私は、一緒に昼食を取っていた友達の西浦久美に事態を説明して、慌ててタクシーを拾って病院に向かった。
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