母親の死

結婚して1年が過ぎた頃だろうか。

母が癌だと判明した。

発症率が5%で予後が悪いとされる癌らしい。


すぐに入院となり、家族で交互に見舞いに行った。

母と二人っきりの時、よく弱音を吐いていたのを思い出す。

「このまま治療を続けるより最後まで自由に過ごしたい」

「しんどい。でも死ぬのは怖い。」

「わたしの気持ちなんて分かるわけない!!」

そう言いつつも、ありとあらゆる治療を誰よりも頑張っていた。


手の施しようが無くなった時、母の悲しい顔が忘れられない。

「お家に帰りたい。」

母の希望を叶えたかったが、体力的に難しいと言われた。

病院での最後はさぞ無念だったろう。


よくドラマで「ありがとう」と穏やかな気持ちで

皆と別れをいうシーンがあると思うが、

まさに人生の終わりを迎えるとき、人間の生き様が問われるのである。


母は結局吐血しながら何も言えず亡くなったのだ。


亡くなる一週間前、音楽が好きだった母に聴かせた曲がある。

松任谷由実の「Hello, my friend」

この曲を聴かせてる間、母は涙を浮かべながら天井をじっと見つめていた。

あの時何か伝えたかったのだろうか?

それとも自分の最後を悟っていたのだろうか?


母は本当に無邪気で天真爛漫な人だった。

母親というよりも娘のような人だった。

ときどき頑張って母親になってくれたけど

背伸びする母より子どもっぽい母の方が好きだった。















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