2-5 私たちがいる
こちらが予想していた通り、
符の反応があるので無事であることはわかるが、先程こちらに届いた知らせに、内心冷静ではいられなかった。
しかし、なぜそれで
(なんで一族の敷地、しかもよりにもよって
どうして今まで、誰一人として気付けなかったのか。こんなに多くの術士たちがいたのに、だ。それほど強い妖鬼ということなのか。
花轎の周りにあったその死体の状態の異様さに、底知れない恐怖が垣間見えた。捻じ曲がった歪な死体が四体。花轎を運んで行った担ぎ手たちだろう。
恐らく、なんらかの予定外の出来事が起こり、そのような結果になったのだと思われるが、それにしても、だ。
(交渉するって······相手はただの人間じゃなくて、妖鬼。しかも特級って····あいつ、どうするつもりなんだ?)
黒幕、と言っても人間相手ならばと許した計画だったが、蓋を開けてみれば最悪の事態。
今までもこんなことは何度もあったが、これは無謀としか言えないだろう。たとえ
あくまで
「師匠、俺たちだけでも中へ、」
「
「けど、もしあいつになにかあったら、」
ぐっと唇を噛み締めて、言葉を呑み込む。わかっている。
ここで事を起こして他の者たちに気付かれ、捕らえられでもしたら色々と問題になることも。
わかっているけれど。
(鳳凰の儀だって、そもそも俺たちに全く関係のないことなのでは?朱雀との契約が終わったのなら、さっさと次の地に行くべきだろう!)
わかっている。
ただ、そのためには悪い風習を終わらせる必要があった。本来の、正しい鳳凰の儀の在り方に戻す必要があるのだと。
だからこそ、神子である自分がそれを皆の前で示す必要があると。
「····気持ちは、よくわかる。だが今は、自分の感情よりも目の前の状況を優先するべき」
「わかってます。ただ、あいつは、本当にお人好しの馬鹿だって思っただけです」
「だから、私たちがいる」
肩に手を置いて、
そのために、いる。ここに、いる。
傍にいると誓った。
白獅子である伯父、
今はまだ、必要だと思いたいから。
手の中の追跡符の信号が途絶えたりしないよう、瞬きすることすら惜しいと思うくらい、その点滅する緑色の光を見守り続けるのだった。
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