1-7 なんで教えてあげないの?
大体の事情を聞いた後、
朱雀宮全体が高い場所にあるのだが、この宮からも
ぐるりと岩壁に囲まれた、この地ならではの景色と言えるだろう。
灰色の岩壁の隙間から覗く、梅の花や山吹、桔梗なども趣がある。岩陰から季節を問わない花々や木々、草や蘚の美しい緑色が所々から見えるので、静と動の美しさと言えよう。
「
ひと通り部屋の中を見て回り、
「
「のむー!」
くるっと身体を声のした方へと向け、
「
「
警戒しているのか、それとも遠慮しているのか、どちらにしても
「はい、どうぞ」
立派な造りの黒く丸い机の上に茶器を並べて、
「
「え? そうなの?
「……問題、ない」
体調的には全く問題ない。問題があるとすれば、自分の狭い心にある。他の事ならばそんなことはまったくないのに、
「みーつけたっ」
そんな中、明るい声が響き渡る。振り返ってみれば、花窓の外に
しかし、花窓の外はまさにその落下防止のための欄干があるのだが、
「な、なにしてるんですか!? 落ちたら死んじゃいますよっ」
「は、早くそこから降りて……いえ、ゆっくりでお願いします! ゆっくり、慎重に降りてくださいっ」
「あは。君、面白すぎ。俺は落ちても死なないよ?」
「おかえり、
「まあね。ここは日向ぼっこには適さないって解ったよ」
確かに、今の時期は日向ぼっこというより日干しに近いだろう。建物の中はひんやりとしていてちょうどいいが、外に出れば少し蒸し暑い。場所によっては汗が自然と流れてしまうほどだ。
空いている椅子に遠慮なく座り、
「ねえ、どうして朱雀の
「え? どうしてって言われても……頼まれたから? あとは、鳳凰舞がどういうものか、見てみたいっていう好奇心もあったかも」
「で、あんたはなんで教えてあげないの?」
「なんのこと?
「知ってるもなにも、鳳凰の儀っていったら、次の宗主の座を巡る、別名、"
「ちょっと待ってください! それって、ものすごく危険なんじゃ……」
固まっていた清婉が我に返り、ますます顔色が悪くなる。
あの宗主も
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