オタゲーマーとおねショタペアのハチャメチャ戦記

戸高一郎

第一話 月夜を移す曼殊沙華

その日東北地方のN県中丸市にある大和町は雲一つなく風がない夜だった。空には満月が浮かび周りの星たちが月をより綺麗に見せ、野山は昼間とは又違った姿を見せる。そこにたたずむ一人の男。彼は血が滴り落ちるナイフを持ちそこから垂れる血は血でできた水たまりに落ち静かに波紋を作る。水たまりには赤く光る満月が映りまるでSF映画で出てくるような世界を映し出した。男はナイフをティッシュで拭くとそれを捨て誰かに電話すると足早に去っていった。血を拭いたティッシュはかつて人であった肉の塊の上に落ち赤く染まりあがる。血に染まり月の明かりに照らされたその色はまるで秋の野原に咲く彼岸花のような赤だった。




それから1日立った朝7時。17歳の高校二年生の福本椿は携帯の目覚ましで目を覚まし起き上がると黒の下着姿で洗面所に行き若干赤みがかった長い髪に櫛をかけ背中まで伸びた髪を頭頂部に集め丸めお団子ヘアにすると朱漆のかんざしを刺し髪を整えた。スパッツを履いてから制服を着ると一階に降りて新聞を取る。その新聞を持ってまた二階に上がりさっきほどまで寝てたベットの反対側に寝てる青年の額に新聞を叩き付けると叫ぶ。


「朝。起きて!」


するとベットで寝ていた平野は目を擦りながら、ゆっくり起き上がる。


しかし未だ眠い平野は大きなあくびをすると、布団をかぶりさらに寝ようとする。


しかし椿は寝ようとする平野の布団を剥がし床に置いた。


「!!!」


6月の東北地方の寒さによって驚いた平野の目が一気に覚めたのだった。


「目覚めた?」


「こんな寒さだと目が覚めるしそもそもまだ㋅なんだから当然でしょ。」


「まあね、起きたんだし学校の準備したら?」


無言でうなずくと平野は起き上がり着替えはじめ、椿は一階に下りて行った。


16歳の平野裕二と数日前に誕生日を迎え17歳になったばかりの福本椿は付き合ってこそないもののお互い一人暮らしで同じクラスという関係だった。椿は高校進学に伴いフランスの中学からやってきた大和町にとっては新参者の一人だった。大和町出身のドイツ系クォーターの父とフランス人の母を持つ福本は同級生に比べ圧倒的に高い170センチ近くの身長を持った体格のいい少女だった。その為入学当初は留学生とよく間違われかなり苦労したのだった。高校一年生の終わりに部活でたまたま違うクラスの平野裕二と知り合い平野の父が持つ(といっても投資用で買った賃貸用の家だが)家に定期的に転がり込んでおりこの日も転がり込み一泊し朝を迎えたのだった。身体の関係は数回あるもののお互い恋人という関係ではなく仲のいい友人という感じだった。


平野裕二は身長が170センチ近くの青年で同じく一人高校入学に伴い東京の品川から大和町に引っ越したものの椿と違い小学生の時は大和町で家族と過ごしており新参ではなかった 。父の出身地である大和町で小学生の大半をすごしたのち東京に越し再び一人戻ったのだった。母は記憶がおぼつかないまだ小さいときに離婚により姿を消し年の離れた兄と姉それに父の三人は仕事で東京にいる為普段家族が家に住んでおらず椿がよくこの家で寝泊まりする為事実上の居候をしてる状態だ。


ちょうど平野が制服に着替え茶の間に行くとトースターが焼き終わりのベルを鳴らす。


椿は焼けたトーストを手慣れたように皿に載せると平野と自分用の二枚にバーターを塗りコップに牛乳を入れると茶の間のテーブルに置く。やがて制服に着替えた平野が下りてきて二人は椅子に座るとパンにかぶりついた。平野はおもむろにテレビを付け椿もテレビを見たとき二人の目をくぎ付けにするニュースが舞い込み二人は数秒口を止めてしまった。それは二人が通う大和高校から1キロほどしか離れてない所で殺人事件が起こったからだ。


「最近殺人多いよね。もしかしたらうちの高校の生徒が犯人だったりして」


平野は冗談交じりに言うと残りの牛乳を口に含み口の中の残りのパンとともに飲み込んだ。


飲み込み終えるとおもむろに立ち上がり冷蔵庫から昨日買った2つのプリンを取り出し椿の牛乳コップの横に置くとプリンを食べながらふと聞いた。


「ところでだけど、椿」


「ん?」


「これって仮に犯人がうちの学校に何かしでかして警察より早く見つけた場合ってあの暗殺担当の七人岬部隊が出るの?それとも俺たち?」


「どうなんだろうね? でも私たちにも存在が秘密でそもそも暗殺担当ってあたり七不思議に過ぎないんじゃないと思うよ。本当にあるなら私たちの耳にも噂は入るはずだけどそれも無く、まして殺人なんて生徒にさせるとは思えないけどなぁ。


でもね、ここだけの話。噂に過ぎないけど、昔一度だけ校内新聞部が当時あった心霊研究会の人が撮った写真を心霊写真として掲載した結果次の日回収というちょっとした騒ぎになったらしいよ?」


平野は幽霊も妖怪も全く信じておらず当然七人岬も信じていなかったがこの七人岬から名前を取った部隊に関しては少し信じてはいた。絶対に探ってはいけない集団。椿の言った話の続きは以前平野は卒業した先輩から聞いたことがあった。


出来事は2003年の9月でその後心霊研究会が本気になって調べていたら突然当時出来たばかりの陸上部の校内専門制圧部隊のアルファによって突入され写真は没収、撮影者は厳重注意を受け校内新聞は回収、修正され再発行となったのち二か月の活動停止処分にさせられたと聞いていたので何かあるとは思っていた。


「なんでも夜にたまたま撮られたんだって。」


「ふーん、でも一体何だったんだろうね。不思議」


平野はそういうとプリンを食べ終え容器を捨て、一足先にプリンを食べ終えた椿はかばんの中身を確認してた。


「そういえばだけど椿ってさ、家にいつまでいるの?料理作ってくれるからありがたいのはありがたいけど、かぐやが今日は泊りに行きたいって言ってるだけど」


「え、噂のかぐやちゃんついに来るの?モテ男だねぇ、それならあって見たいし今日も居座ろうかなー」


椿はにんまりしながら平野を見た。


一体何者でどんな人なのだろうか、綺麗な人とは聞くけど一度はあって見たい・・


平野が所属する探偵部の後輩でもあり椿と同様一年で陸上部の校内制圧部隊、アルファに入った林晴也とは面識もあり平野や林の家で三人で集まりゲームをすると言う椿は見たこと無く話でしか聞かないその、かぐやに椿は興味深々だった。




去年の夏。7月の中でも特に気温が高いその日平野はボランティア部の体力テストで希望者全員で上るという河原へ足を運び本番の雰囲気を確かめるため重しを入れたバックパックを背負い一人河原を上っていた。一時間ぐらいだろうか。距離にして山の麓から数キロ離れ自然豊かで山道も近くにはなく人気も何も無い河原を上っていた時、ふと遠くに白い着物のようなもの起きて近くの岩の上に座り向こう岸を眺める人のような物が目に入った。


こんな山奥に人が?しかしここは麓から何キロも離れている場所。一体何なのだろうか、人がいるとも思えないし幽霊や山の神といったたぐいなのか、、


そんな疑問を胸に河原を進み後ろを通りすぎたタイミングでその横顔を見た。


青白い肌を持ち白い腰まで伸びた髪、顔つきは椿と同じヨーロッパ系だろうか。初めて見る系統の整った顔立ちと薄紫色の瞳はどこか人間ではない雰囲気を醸し出していた。


一体なぜこんなところに人が?


そんな疑問を浮かべ数秒横顔を見たとき


「ねえ君」


そう声をかけられたのが付き合いの始まりだった。


今でもかぐやと言う名前以外年齢(お酒は飲めるので二十歳は迎えているらしい)住所、出身地すべてが謎に包まれている。ほとんど笑わずどこか無機質でミステリアスないっぽう、ゲームや漫画、映画に加え食べる事に寝る事、温泉が大好きで今では平野のゲーム仲間であり半家政婦そして4月に新たに知り合った後輩の林を迎え三人トリオの一人になっている。


そんなかぐやは今林の家に三日ほどいて今日にでも泊りに行きたいと前日に林から聞いていた。


「いやいやいや今日も泊まるの?かぐやも椿にはそのうち会いたいとは言ってるけどさぁ」


平野は半笑いしながら椿を見て言った。


「じゃあそのかぐやちゃんが今日家に来る時聞いてみてよーおっけいだったら今日も泊まるね!」


そう言うとどこか嬉しそうに鼻歌を歌いながら通学のリュックを背負い玄関で靴を履き始めた。


まだかぐやが泊りに来るの確定してないんだけど・・


そう思いながら平野も玄関で靴を履き外に出た。


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