第24話 馬車の中!

辛いよね、針の筵の上にいる気分。


両手に花を持って、前面には苦笑いの人と、ニコニコ顔の人。

少しでも喋ったら質問の嵐! 答えを間違った時に俺の両腕が危ない!


まず口火を切って話し始めたのは、商業ギルマス。

「そうね、ケイジさん、貴方の売ったものは全て売れました」

(はいさっき買い占めたと言ってましたね)


「それと、光るガラスも私が買います、姉には別の物を頂いた訳だしね」

隣の領主が眺めている物を見ている。

「なによ、あげないわよ!」


領主さんはガラスの靴を抱きしめて外を向く、欲しそうな商業ギルマス。

「全く、あんな物を隠しているなんて私も見抜けなかった、あれ程袋から移動させている時に見ていたのに」

(やっぱり、あの時に鑑定してたんだ、変な声が出ていたもんな)


「それと貴方の両隣の二人、離れなさいケイジさんから!」

「「イヤよ」」

呆れ顔の商業ギルマス。


「何で離れないのよ、世間体があるからとりあえず離れなさい」

「何で離れないといけないのです、お母様」

「そうです、此処では商業ギルマスの力は及びません、叔母様」

少し怒り顔のギルマスの横に座る領主さんが言ってくる。


「まあエリス、子供達の行動も仕方ない物じゃよ、これ程の物を出されてその殿方を惚れぬなどしない女の子は居ないはず、妾もハインツがいなければそちらに座りたい物じゃよ!」


したり顔の領主と呆れ顔の商業ギルマス。

「だけど二人ともですよ二人とも!」

怒り顔のギルマスに領主さんは言う。


「お前の義理の兄、現王は確か五人の嫁と十二人の子供を持っている。

子沢山で良い事だと思うが、お城は大変じゃな、跡目争いでな」


「そうでしょう、だから私たちみたいに一人に愛情を集めて、他の女に目が行かない様にしないと。外にも何故か四人もいるしね」

俺をジト目で見てくる商業ギルマス。


「待ってください俺は言いますけど、商品は売ったり食べたりしたら無くなりますし、補充方法はありませんよ! それに外の四人は行きがけで助けただけだしね」

今度は前の二人がジト目で睨んでくる。


「君ね、言っとくけどこの世界の女の一部には鑑定と言う魔法が使える者が居る。

人それぞれでレベルがあるのだけど、中にはその者の未来が見える女もいるのよ!

男には出来ない魔法なのよ」


「早々、未来視と言う極限の魔法持ちもいる、そ奴らにかかれば男などいくら近付いても相手にされない。

その魔法持ちが此処の中にいて、お主を見て結果を導き出しているのじゃよ」


「それでなくては、領主の馬車の中には一緒に居られるはずは無い!」

えー四人の中に俺の将来が分かる人がいるの、ぜひお友達に欲しい。


何故か俺の腕をしっかりとホールドしてくる横の二人、痛いんですけど。


「後もお一つあるぞ、心眼持ちと言って、相手に触っているとその者の心が読める者もいる」

何その魔法、隠し事が出来ない嘘発見器じゃ無いですか? まさか隣の二人とも。

俺は交互にスージーとクリスティーヌを見る、二人は微笑んでいる。


「待て待て離れてくれ、二人とも俺の心を読むのをやめてくれ」


「もお、お母様は言わないでくれます、また殿方が逃げていきます」

「いつもクリスティーヌがバラすから男が逃げていくのに」

「スージーだって、私の事を言うから、知らない冒険者しか声をかけなくなったのよ」

「私だって同じよ、誰も近寄って来ないんだから」


「俺も辞退します、馬車から下ろして下さい」

俺が言うと、四人で微笑んで来る。

「無理よ全員で貴方の未来を見ているんだから、逃す訳はありませんよ」


微笑む女達、馬車は領主邸に着く。














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