第3話 魔法を使ってみよう

「あぃ、あぉ~おうぁっえいぉ〜(よし、魔法を使ってみよう!)」


 俺が魔法を使ってみようと思い至ったのは、暇を持て余していたからだ。

 俺は赤子の身体であるため、眠気に襲われて、そのまま寝てしまっていた。しかし、大人の精神を有しているので、起きている間は暇なのである。


 この世界の神は、俺に魔法の能力を優遇してくれたと言っていたな……。魔法は想像力だとも……。


 自分がどんな魔法を使いたいかを考えてみるが、使いたいよりも使っても大丈夫そうな魔法を考えた方が良さそうだ。

 火の魔法を使ったら、危険かもしれないし、魔法を使っていることがバレてしまうだろう。

 ラノベとかのテンプレで、比較的安全な水魔法や光魔法を使って、魔法が使えることがバレるとか読んだことあるから、水魔法と光魔法もダメだな。

 バレづらい魔法となると……、風魔法か?風魔法なら無臭だし、事象も風が吹くぐらいだし、室内で練習するのに良いかもしれない。


「あえぉ、うえぇ〜!(風よ、吹け〜!)」


 シーン……。

 風を吹かせようと思い、詠唱っぽいものを唱えたものの、ちっとも風が起こる様な兆候はみられない。

 そもそも、魔法って、どうやって発動させるんや?この世界の神は想像力と言っていたけれど……。


 取り敢えず、風が吹くイメージを思い浮かべてみるか……。想像力…、想像力……。

 自分自身に微風が吹くのをイメージする。すると、胸と腹の辺りが少し温かくなってきたのを感じる。

 胸と腹の温もりが強くなった時、本能的に魔法を発動出来ると感じた。そして、微風の魔法を発動するイメージを思い浮かべる。

 すると、俺の頬を微風が撫でるの感じた。拙いながらも、俺は魔法を発動することが出来たのだ。

 そして、俺は魔法が出来たことに歓喜しながら、意識を失ったのであった。



 俺が意識を失っていた時間は短かったのだろう。微風を起こすぐらいなら、そんなに魔力を使わないに違いない。

 しかし、赤子の身では、そんなに魔力が多い訳では無い様で、微風を発動させただけでも、それなりに負担となる様だ。

 こういうのって、ラノベだと限界まで魔力を使い続けて気絶し続けるのが魔力の鍛錬だったりするのがテンプレだ。逆に生命や身体に障害を齎すのこともある作品とかあったが、地球文化が好きな神ならテンプレ通りにしてくれているはず……。

 こうして、俺は風魔法の鍛錬を密やかに行うことを決めたのであった。


 毎日、乳母の目を盗んでは微風を発動し続けていた。最初の内は一回で気を失っていたものの、次第に慣れたのか、魔力量が増えたのか、気絶する回数も少なくなっていく。

 微風を何度やっても気絶しなくなると、風の強さを少しずつ強くした。強めの風を吹かせることを出来る様になり、今では自分自身で揺り籠を動かすことも出来るのだ。

 自分の揺り籠だけ動かすのも申し訳無いので、隣のシャステトの揺り籠も揺らしてやる。すると、シャステトはキャッキャと喜んでくれるのだ。

 こうして、俺の魔法の能力は少しずつ向上していった。魔力も日々増えていくのを実感し、魔力の操作も少い魔力で発動させたり、大人たちにバレないように気を遣っているため、細かく扱うことが出来る様になった気がする。

 この世界での魔法がどの様なモノかは、まだ分からないが、俺の魔法は神の言う通り想像力やイメージが重要な様だ。想像力やイメージが疎かになっていると、魔法が発動出来なかったり、思っていたのと違い効果が出たりする。

 また、想像力やイメージが重要になるため、無詠唱での発動になる様だ。この世界での魔法のことがまだ分からないので、無詠唱が当たり前なのかどうかは分からないが。


 取り敢えず、赤子の内は風魔法で魔法の鍛錬を続けようと決意したのであった。

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