AVERSE NOVELSーAKASHIMORINONEKO SYOUHONー
川
三界旅手帖
差出人が書かれていない小包が届いた。
思い立ったが吉日、押し入れの奥から柳行李を引っ張り出して、旅支度を始める。昔使っていたものだが、まだまだ使える。長旅にはならないだろうから、身軽に行きたい。しかし、夜は冷えるだろうから、
駅へ向かう道すがら、通夜の帰りだという和尚に呼び止られた。
もうしそこの
【中略】
汽車が
雲ひとつない宙には満天の星が輝き、大河を生み出している。汽車は川の上にかかる鉄橋に差し掛かった。水面には天の川が映っている。窓から身を乗りだせば、水鏡に吸い込まれてしまいそうな感覚に陥っていた。
陸地を走るようになってだいぶ経ったが、車窓からはススキ野原しか見えない。その中に大小まちまちの石が並んでいた。きっと墓石なのだろう。見るからに古いものだが、しっかり菊が供えられている。いったい誰が―。それは知るすべもないこと。それでも信仰が残っているのだと思うと、心が洗われた。
改札口だけの駅だった。その向こうに広がるすすき野。空は沈む太陽と薄闇の色が混ざり合っている。かたわれどきだ。しばらく停車すると車掌が言っていた。プラットホームの柵に寄りかかって、
【後略】
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