侵略の布石

※以下、「日本不審者情報センター」より引用


(東京)練馬区田柄5丁目で声かけ 2月12日午後

https://nordot.app/997799736362237952?c=134733695793120758


警視庁によると、12日午後2時30分ごろ、練馬区田柄5丁目の路上で女子小学生への声かけが発生しました。(実行者の特徴:男性、茶髪、ジーンズ、マスク)


■実行者の言動や状況


・帰宅途中の女児に声をかけた。


・「靴の色何色?」


・「写真撮ってもいい?」


■現場付近の施設


・光が丘駅[東京都交通局]、練馬春日町駅[東京都交通局]、練馬小学校、光が丘春の風小学校、光が丘夏の雲小学校など



〜〜〜



 あの日、山奥で事故を起こしたはずの俺は鉄すぐになった車の中でなぜか無傷だった。


 それからだ。

 俺の認識能力がおかしくなっていったのは。


 まわりにばかりが溢れた。食べ物も建物も言葉も、俺としての記憶はしっかりとあるのに、この世の全てが既知であり未知であった。


 医者に相談したが、解離障害の一種だろうということくらいしか分からなかった。なにしろ、俺の脳は一切損傷しておらず、あらゆる検査で異常が見られなかったからだ。


 街を歩いても、見慣れないものばかりだ。


 だが、未知のものを認識すると、俺の中で何かが囁くのだ。


 ──クオリア確立完了。


 クオリアは「それがそれであるという認識をもたらすもの」とでも言えばいいだろうか。目の前のものを脳の中に感覚として再現できるという概念のことだ。


 この内なる声がなんなのか分からない。だが、俺はこの声が聞きたくて、今日も外を歩き回る。趣味だったカメラを片手に。


 女子小学生が歩いていた。

 その靴の色を俺は初めて見た。


「靴の色何色?」


 その子に尋ねた。


「ホワホワ色」


 よく分からない。だが、俺の記憶は知っている。可愛らしいユニコーンの背景だったりに配置されるあのボワーッとした色だ。


「写真撮ってもいい?」


 靴の写真を撮ると、頭の中にあの声がした。


 ──クオリア確立完了。


 新しい声がした。


 ──地球文明情報の予測構築開始。


 …………──。


 ──母艦へ惑星情報を送信。


 俺は悟った。

 が地球にやって来る……。

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