口裂け女ハンター
天災は忘れた頃にやって来る。
それは妖怪の類もそうだ。一時の流行りであちこちで目撃情報が増えることがあるが、廃れ始めると途端に情報が途切れていく。
全国口裂け女駆逐協会の小野崎会長は危惧していた。
コロナ禍におけるマスク着用を推奨する社会が口裂け女に自由を与えている、と。
小野崎は口裂け女ハンター界では知らぬ者はいないほどの腕利きだ。
彼のトレードマークは両手にはめたタングステン鋼の手甲だ。これを開いた口裂け女の口にぶち込んで無力化し、もう一方の手甲でボコボコにぶん殴りまくる。それで一時期は日に2〜30体の口裂け女を地獄の底に叩き落としてきた。
だが、どうだろう?
昨今はマスク姿の人間ばかりで、口裂け女ハンターとしてはただでさえ厳しい駆逐状況と相まって、活動が芳しくない。
先日も、とある著名人がマスク反対を主張していたが、あれは有名な口裂け女ハンターだ。
今のご時世に反マスクを唱えている人間のほとんどは口裂け女ハンターであると言ってもいい。
今日も小野崎は自慢の手甲を装備し、口裂け女を探す。
目の前に女子中学生らしき後ろ姿がある。小野崎は口裂け女ハンターとしての使命感に駆られて、その後ろ姿に近づいた。
「学校どこ?」
口裂け女なら答えられないはずだ。
マスクの向こうで、女の目が訝しげに細められる。
──怪しい。
小野崎は身構えながら言った。
「マスクを外してくれないか」
〜〜〜
※以下、「日本不審者情報センター」より引用
岩手)滝沢市牧野林で声かけ 1月30日朝
https://nordot.app/994081641934340096?c=134733695793120758
岩手県警によると、1月30日午前7時30分ごろ、滝沢市牧野林で女子中学生への声かけが発生しました。(実行者の特徴:男性、50~70歳、白髪交じりもみあげ、無精ひげ、黒色ダウンジャケット、ベージュ色作業ズボン、帽子)
■実行者の言動や状況
・登校途中の女子生徒に後ろから近づき、声をかけた。
・「学校どこ?」
・「マスクを外してくれないか」
■現場付近の施設
・盛岡北高校
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