いつか、いつか…(ちいさいお話です)

@J2130

第1話 江ノ島です

 トラウマってありますよね…


 ある制服姿の女子高生と向き合ったとき、50代半ばの僕は自然と道を空けてしまいます。

 これは「男子校哀歌 青春篇 第3話 男って…」にある通りです。


 そこまでいかないですが、『宿願』になるのかな…

「いつか、いつか…」

 と思っていたことが、この年始にやっと成し遂げることができました。


 神奈川県藤沢市の江ノ島はみなさんご存じかと思います。


 サザンの歌にもありますね。

「江ノ島が見えてきた~」

 はい、そこです。


 父の勤める会社は寮というのか会社が提携している旅館がありまして、子供の頃に毎夏、鵠沼に行ってました。

 海水浴ですね。

 楽しい思い出です。

 鵠沼海岸から左に大きな江ノ島が見えていました。


 そして大学時代には三浦半島の先っぽで毎週のようにヨットに乗っており、レースのさいには江ノ島のヨットハーバーまで船を廻航していました。

 レースってやはり江ノ島が多いのです、


 社会人になってからは先輩や後輩と江ノ島のそのハーバーにバースを借りてヨットに乗っていました。


 この度のオリンピックの為、国家権力により追い出されましたが、大学卒業後もヨットマンでいられたのはここにヨットを持っていたからでした。


 江ノ島とは…

 ヨットに乗るために汗まみれ潮まみれになるところでした。


 詳しいのでデートにも家族のお出かけにも使ってはいます。

 たくさんの神社もありますし、向こう側には洞窟もあります。

 食べるところもいっぱいです。

 植物園内のカフェのフレンチトーストは絶品です。


「エスカー」って知ってますか…?

 乗り物です、

 島の最上部まで行けます。


「エスカー」いいでしょ、お金は取られますが。

「エスカー」なぜか登りしかありません。

「エスカー」なくても歩けば最上部までは行けます。


「エスカー」の正体は…


 ただのエスカレーターです。

 有料のエスカレーターがあるのです。

 楽ですよ…ヨットマンが、地元のように知っているこの島でエスカレーターにのるのか…


 はい、乗ります。


 楽ですから。


 でもね、江ノ島は汗まみれ潮まみれの印象なんです。


 さて…


 何度も何度も行っています。

 一番賑やかな参道の両側には飲食店やお土産屋、そして旅館というかホテルが並んでいます。

 趣のありそうな建物と門があります。


「一度でいい…」

 大学時代もそしてOBになってヨットに乗った帰りとか、ちょっと歩いたとき…

 家族で遊びに行ったとき…

 思うのです。


「一度でいいから、この辺りの宿に泊まってみたい…」

 日帰りでも行けるのに、おなじみの場所なのに…

 泊まる必要もないのに…

 でも泊まってみたい…

 思っていました。


 貧乏なヨットマンの一人としてなじんだこの島に

「いつか泊まってリベンジしたい…」


 この年末年始はカレンダーの関係で私が働く薬局は4日から営業することになりました。

 ここ毎年、2日から4日まで二泊三日で旅行していたのに、今年は一泊しかできない…


 どこに行こう…


 ネットで探していました。

「ああ…江ノ島もいいかな…」

 数軒あたってみました。

「まだ予約可能だな…」


 そんな時、奥さんが僕に言いました。

「今回はさ…遠くにいけないから…江ノ島ってどう…?」


 夫婦って考えが似るのですね。


 宿願の江ノ島に泊まりました。


 4時ごろに車で着きました。

 宿の前には宿泊予定者の名前が出てますよね。


「パパ、名前が出ている」

「すごい! 写真撮っちゃおう! 」

 なんか感動です。

 ここに名前が出るなんて…

 

 チェックインして部屋に行くと窓から江の島大橋と何度もセイリングした海が見えます。

 感動です。


 大浴場に入り、そして部屋で夕食です。

「旅番組みたい…」

 思わず言っちゃいますよね。


 娘、奥さんと向かいあい、僕はビールを飲み海鮮を楽しみます。


「俺もここまで来たか…」

 こんなことで喜ぶのは僕がまだまだ小さい人間だからでしょう。


 でもね、江ノ島に泊まれるなんてさ…

 青春のリベンジをした感じでね。


 昔の僕に言いたい。


「まだ憧れだけど、いつかいつか家族で泊まれるから、がんばれよ…」


 すいません、小さいリベンジ、ドリームカムトゥルーです。

 すいません、うれしかったのです。


 昨年はいろいろありまして…

 なんか感動したのです。


       了


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いつか、いつか…(ちいさいお話です) @J2130

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ