第30話 レイ
「妾を連れて行って欲しいのじゃ!」
「……何で急にのじゃ語尾に?」
あれ?のじゃ語尾であってる?私しかこの単語使ってないかな、のじゃ語尾。
「のじゃ語尾はよく知らんが……兎も角、妾はこっちが本当の口調なのじゃ。と言うのも妾は知らんうちにここに迷い込んでいたのじゃ」
「そ、そうなの?」
奇遇ですね、私も知らずに別の場所に飛ばされてましたよ。本当はもっと簡単なダンジョンに転移されるはずだったのにね。
「でじゃ、妾も色々ここを探し回っていたがどこにも出口が見当たらないのじゃ。そこで妾を地上まで連れてって欲しいってわけじゃ」
ん?出口ならあそこにあるんじゃないの?
「連れってってくれるか?」
うーん、まだ私の安全が確立されたわけじゃないし、なんならステータス値だけ見ればこのモフモフドラゴン、略して、もふどらの方が強いしなぁ。
「と言うのも私の安全が確立したわけじゃないから無理かな」
「むむむ、確かに。どうしようかの」
このもふどらって魔獣なんかな?どうなんだろ。でも、龍人族って言ってるくらいだしなあ。一応聞いてみる?
「もふど……やっぱいいや、もふどらは魔獣なの?」
「妾はモフドラなんかではない!ちゃんとレイという名があるのじゃ」
「じゃあ、レイさんは魔獣なの?」
「いきなりじゃな。一応妾は分類上では魔獣という扱いらしい。酷い限りじゃ。妾は獣風情とは違う。もっと高貴な種族なのじゃ」
あ、はい。じゃあ、魔獣契約でいいかな。
「私魔獣契約スキル持ってるからそれで契約してもいい?別に連れっててもいいからさ」
「おお、それはありがたい。早速始めるぞ」
契約って念じればいいのかな?ま、物は試しか。
『契約』
「おっけー。これでいいのかな?」
なんか私ともふどらさんの体がピカーって光ったし。
「ちょ、ちょっと待つのじゃ。お、お主ステータス値がおかしくないか?妾とほぼ同格なぞ聞いたことがないぞ。さらに魔獣契約スキルが最大じゃと?それじゃあ永遠に妾はお主と付き合わなければいけないじゃないか」
え?そうなの?てっきり途中で契約を破棄できるのかと思ってたんだけど。もしかしてこれって安易に契約しちゃいけないやつ?
「なんかごめん」
「ぐぬぬ、お主、やりおったな」
「やりおりました」
「お詫びに私特製のご飯あげるからさ。それで解決ってことでいい?」
ていうかもふどらって何食べてたんだろ。ここ何にもないように見えるんだけど。
「なんか、上手く丸められたようで小癪じゃが、分かったのじゃ。ここにきてから2年は食事をとっていないしな。腹が減っては戦はできぬなのじゃ」
戦をするつもりはないけど、2年もご飯食べてなかったのか。可哀想。そんなことより重大な事実に気づいちゃったかも。人化スキルって何?
「レイさん。人化スキルって使える?」
「ん?もちろん使えるぞ。暇だったから使ってたらスキルレベルが最大になってたしな、それ」
美幼女だ。見た感じ7歳くらいかな?可愛い。髪は白髪でって、クルハと同じ髪色か。遠くから見たら親子だと勘違いされそう。
「か、可愛いです」
分かる〜。なんか保護欲を掻き立てられるというか。実際は保護される立場にあるかもしれないけどね。ステータス値はもふどらの方が高いし。なんか無念。
「ま、とりあえず服着よっか。なんかこう色々と危ないから」
というわけで急遽もふどらの服を作ります。まずは下着。スポーツ用の下着でいいかな。動きやすいし。続いて服。服はとりあえず、ジャージでいいかな。一番体に馴染みやすいだろうし。
「はい、とりあえずこれ着れる?」
「む、何じゃこの布切れは?」
「あーそういう次元の方か」
服を着たことがないのか。じゃ、着せてあげよっと。
「よし。これでオッケー」
「むむむ、なんか変な感じがするのじゃ」
「まぁまぁ、そのうち慣れるって」
多分。
「さて、色々終わったことだし、ご飯にしますか」
今日は新しい仲間も来たことだし、天ぷらにしようかな。仲間が来たことはあんま関係がないような気がするけどね。
ふふふ、実はもう揚げる前の段階までは全て終わっているんだ。やっぱ、揚げたてが食べたいからね。まあアイテムBOXに入れても時間経過はないから揚げたてが食べられるんだけどね。ま、そこは気持ちの問題ってやつかな。
下準備をした具材は結構あって、たこ、レンコン、鶏肉、さつまいも、半熟卵、えび、舞茸、ししとう、かぼちゃなどなど。まあ、定番系が多いかな。あと、天ぷらじゃないけどかき揚げの下準備もしておいた。かき揚げ美味しいし。
ではまずは鶏肉から。特に順番は関係ないけど、何となーく鶏肉にしてみた。カラッと上がるように少しずつ揚げていってと。よし。この調子で揚げていこうかな。
「何を作っとるんじゃ?」
「天ぷら。知ってる?」
「知らん。初めて聞いたぞてんぷらなる物は」
やっぱこの世界に天ぷらは無かったのかな。まあ、もふどらが人の世界に行ってないだけかもしれないけど。
「まぁまぁ、ちょっと待ってなって」
「分かったのじゃ」
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