伝えること

奏〜カナエ〜

あなたに

 言葉に出すのが恥ずかしい。頑張って口に出しても思いは放物線を描いてしまう。もっと素直に正直にと反省会をする。それなのに貴女は真っ直ぐに気持ちを伝えてくれる。僕は後出しで真っ直ぐに伝える。


 隣を歩けば僕の手はいつもポッケから出ている。触れられないまま外に取り残されている。貴女は冷え切った僕の手に気付き、温かい心で僕の心を解かしていく。僕の手で少し冷めてしまったその手を強く握り返す。


 こんな自分が嫌いなのに貴女はこんな僕が好きだという。いつもいつも助けてもらっているのは僕なのに貴女はありがとうという。

嫌われたくなくて、いつも踏み止まってしまう。心の自分はいつだって最悪な想定だけを出力してくる。貴女がこんな事で嫌うはずないのに。

 

 僕も好きだと、貴女と同じ気持ちだと素直に伝えたい。そんな気持ちとは裏腹に足は進んでいってしまう。ずっとそわそわしている僕に貴女は気付き、

「大丈夫だよ。伝わってるよ」と、伝えてくれた。

 

 今すぐにはできないかも知れないが、ゆっくりと時間をかけてでも、貴女に気持ちを伝えれるようになりたい。いつか勇気なんてものを使わなくても伝えれるようになれたらいいな。

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伝えること 奏〜カナエ〜 @mukiziro

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