第13話

「待ちたまえ、橘後輩。何所へ行こうというのかね」

 僕は先輩から逃げようとしたけど、すぐに捕まってしまった。先輩は意外と足が速かった。

「ちょっと、離して下さいよ」

「何を勝手に怒っているのだ、橘後輩」

「あなたの所為で……」

「はあ? 何を言っているのだ?」

 この人、本当に分かってないんだ……。

「全く、あなたはデリカシーのない人ね」

 白鳥さんが呆れたと言う様に言った。

「どういう事だ、白鳥後輩」

 先輩が白鳥さんに説明を求める。

「橘君が世間体を気にして、心霊研究会に入っていることはクラスメートには黙っておこうとしている矢先に、あなたの所為でそれがバレてしまったのよ」

「何故、バレると困るのだ?」

「クラスで浮きたくなかったからだと思うわね」

 それを聞いた先輩が僕から手を離し、息を吐きながら言った。

「なんだ、そんなことか」

 そんなことって。随分と簡単に言ってくれる。

「良いかね、橘後輩。心霊研究とは、恥ずべき行為ではない。世の中の不思議を解明する素晴らしい行為だ。それに、知られたくなかったことが知られたとて、そう気に病むことはない。君が思っているよりも、意外と物事は単純に進むのかもしれんよ」

 これは先輩なりの励ましかもしれない。大本の原因もこの人にあるけれど。

「……そうですかね」

「そうだ。……それに、私は逆にバレた方が良かったと思っている」

「……はい?」

 何を言ってるんだ、この人は。

「橘後輩は、我が研究会がひっそりと活動するだろうと思っているらしいが、それは間違いだぞ。研究会だからといって遠慮することはない。私は全校生徒を巻き込んだ活動も視野に入れている」

「何を、する気ですか?」

「まだ秘密だ」

 先輩は、楽しみで堪らないという様に笑った。見た目に合わない、子どもっぽい笑顔だった。

「それで、あなたが今日私たちを呼びに来た理由はなにかしら? それに、具体的な活動内容、活動場所についても知らされていないわ」

「そういえば、そうだったな。では、具体的な活動場所に案内しよう」

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