第5話
中学校に入学して二週間が過ぎた。
そろそろ、どの部活に入るかを決める時期である。
運動は苦手で芸術的才能も無い僕は、部活動への興味が持てなかった。
帰宅部に入りたいのだが、担任が許可してくれない。
仕方なく、一番楽そうなコンピュータ部にしようかと思っていた。
彼女が登校してきたのは、そんな時だった……。
こんな話がある。
宇宙人が地球視察のために、自分の星の住人をエージェントとして送り込むのだ。既存の地球人そっくりに手術をして。勿論、既存の地球人は始末される。
だから、ある日突然、友達が変な行動を取るようになったり、性格が別人になったとしたら、それは宇宙人かもしれないね、と父が話していた。
これを聞いた当初は、そんなバカなことがあるものかと思っていた。
しかし今、僕はその話が本当かもしれないという恐怖を感じている。
あだ名が「ウチュウジン」といっても「本物」と仲良くなれるはずがない。
僕の隣に宇宙人……。
白鳥美和子は宇宙人……。
そうでなければ、なぜこうも性格や表情が変わっているのか。
まるで、別人だ。
小学校の頃の白鳥さんは、明るくて、よく笑って、友達も多かった。
人を寄せ付けない雰囲気なんて無かった。
こんな不機嫌そうな顔ではなかった。
少なくとも、学校に来て一時間でクラスから浮くような子ではなかった。
そして「黒魔導師」ではなかった。
彼女は、自分は黒魔導師だと名乗ったのだ。
宇宙人か黒魔導師か。……どちらも厄介である。
なるべくなら関わりたくない。
関わりたくはないのだけれど……。
「あなた、宇宙って書いてソラと読むの? まさか、そのままウチュウとは読まないわよね」
話し掛けられてしまった。
しかも読み方、合ってるし……。
「……あ、うん、そう。……えっと、僕の名前は橘宇宙。僕のことなんて知らないだろうけど、君と同じ東山小出身で……」
無視するのは駄目だと思ったので、とりあえず自己紹介をすることにした。
白鳥さんは、そんな僕をジトーっとした目で見ていた。
「……まあ、一年宜しく」
「あ、そう」
僕なんかどうでもよいというような口振りだ。初対面の人に向かって、その態度はないだろう。
いくら冷めた性格の僕だって、ここまで酷くはない。
少しムッとした気持ちで、僕は読みかけの本に目を落とした。
彼女がこの時、僕をどう思ったのかは分からない。
でも、僕の彼女に対する印象は「嫌な人」であった。
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