第3話
僕が今日から通うことになる青山東中学は、多くの新入生で溢れていた。
父と別れ、クラス発表を見ようと昇降口に向かおうとしていた時だ。
「よぉ、ウチュウジン」
知り合いに声を掛けられた。
彼は北野君。去年同じクラスだった人だ。
ちなみに「ウチュウジン」というのは僕のあだ名だ。
僕の知り合いの半分くらいがこう呼ぶ。
別に、いじめとかではない。もう慣れたので、正直どうでもいいと思っている。
「お前と俺、同じクラス、一年二組だ。また一年よろしくな」
「ああ、そう。……まあ、宜しく」
去年もそれほど仲が良かった訳じゃない。たまに話す程度の関係だ。
「他に同じクラスだったのが、水野と出川と天野と沢。それに白鳥美和子ちゃん!」
前の四人は全員男子で、去年のクラスで北野君とよくつるんでいた人たちだ。
「白鳥美和子」とは、僕たちがつい先日まで通っていた東山小学校のアイドル的存在である。学年を越えてファンがいた程の美少女であった。
「ふーん。別にどうでもいいよ」
白鳥さんとは全く話したことが無い。六年間同じクラスになったことは一度も無かったので、接点は皆無だ。
有名だったので、僕は彼女を知っていた。しかし、彼女が僕を知っているということはないだろう。
「ど、どうでもいいって、お前なぁ。そんなんじゃ、一生恋愛できねぇぞ」
「いいよ、出来なくて」
この時の僕は、まだ恋を知らなかった。
友達と呼べる友達もいなかった。
高校生になって、この二つを同時に手に入れることになるのだけれど、中学時代にもこれとはまた別のかけがえのない体験をしたのだと思う。
今になって思うことだが、中学時代の僕は、恋とも友情とも違う何か別の大切なものを手に入れていた。
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