サクラの向こうに <Code戦記>

緑ノ里

プロローグ

 今から二十年前…………

 とある新興国が、ヨーロッパ諸国連合、通称EUへの加盟を申請した。当時、この申請に反対する国は無かった。ある一つの先進国を除いて。

 彼らは初期は反対の声明を出すだけであったが、その行動は徐々にエスカレートしていき、ついに新興国に攻撃を開始したのだった。

 元より、その先進国は他の多くの国と対立しており、先進国を引き連れて新興国へ侵略を開始した。彼らは今では"新枢軸国"と呼ばれている。

 しかし大戦初期、国際連合やその他の国は、この戦争に深く関与はしなかった。この処置は、この戦争が世界大戦に拡大してしまうことを防ぐためのものであった。

 しかし、開戦から数ヶ月後、世界を震撼させる事件が起こる。

 新興国の首都に核爆弾が落ちたのだ。

 新興国はこれにより国家システムが麻痺し、被害が拡大していった。この事件を国際連合は見過ごすことができなかった。新枢軸国に対抗すべく、国際連合も連合軍を結成し、新枢軸国の鎮圧に乗り出した。

 この連合国と新枢軸国の戦争を現在では


 第三次世界大戦


 と呼ばれている。

 この戦いは、人類が今まで経験してきた中で、最大であり最悪のものとなってしまった。

 その実態は、常に空にはミサイルと砲弾が飛び交い、どこにいても爆弾が落ちるほどのものだった。双方の主要都市は悉く爆撃され、街は廃墟と化し、無関係の民間人は炎の渦に巻き込まれていった。

 これは日本も例外ではない。

 新枢軸国のすぐそばに位置する日本は、真っ先に彼らに狙われた。大戦初期、自衛隊の奮闘で辛うじて本土への攻撃は防がれていた。しかし、戦前から防衛力強化をされていなかった自衛隊では、迎撃にも限界があった。

 そして開戦から二年後の八月十五日。東京上空に一つの新型爆弾が投下され、大都市東京を含む関東地方は消え去った。地上の建物と、そこに住む人々は一瞬にして蒸発し、実に日本国民の四十パーセントが土に還った。

 皮肉にも終戦記念日に起きた関東地方消滅。これを皮切りに、新枢軸国は新型爆弾の投下を拡大させていった。

 ここから大戦の戦局が大きく変わり始めた。連合国はこれ以上の犠牲を減らすために、鎮圧より人類の存続のために大戦の早期講和を急いだ。

 大戦は五年続き、最終的に連合国の勝利に終わった。結果、世界人口の三分の二が死亡し、世界都市の八十三パーセントが機能停止することになった。

 この戦いは連合国・新枢軸国共に、多大な犠牲を払ったものの、結局は元の世界に戻っただけなのである。つまりは、この戦いで得たものは何も無かったのである。

 だが、そんなことを考える人はごく僅かであった。皆、戦争の終結に安堵し、復興作業に必死だったからである。


 大戦終結後、世界中の国々は急ピッチで復興作業を開始した。ここでは日本を例とする。

 関東地方で行われた放射線除去後の調査では、地上の建物は一つ残らず消滅し、地下施設の一部が存在しているだけであった。

 がしかし、関東地方に投下された新型爆弾の被害。これは皮肉にも、首都復興の大きな手助けとなった。全てが消え去った土地は、街並み、交通システムなどを改装する自由度を大きく上げた。

 それから東京都は劇的な変貌を遂げ、新東京として生まれ変わったのだ。

 現在、人々はこの幻想のような都市、新東京で幸せな生活を送っている。だが果たして、これが日本と世界の行き着く先だったのだろうか…………?

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