【ノルン - 9】少女は役割を全うする

※2 少女は夜逃げする から続くノルンの昔話です。【ノルン - 13】まであります。


「ノルン先輩、神託が降りたっす」


「今度はなにかしら?


 ノルンはまたかと呆れていた――



 ノルンがセレスティーナを弟子(仮)にして100年程経過した。ノルンは弟子をとったつもりはないので師匠呼びを許さず、先輩呼びでセレスティーナに妥協させた。


 この100年は女神教皇国に行ったり来たりとノルンにしてはアウトドアな日々を過ごしていた。

 セレスティーナに錬金術を教え、度々発生する瘴気こと悪性魔素デスフラッピングエーテルの対消滅、もとい浄化のサポートをしていた。

 元々魔素抵抗値の低いセレスティーナは錬金術の素養があった。女神から賜ったスキル錬金術が無くともノルンからノウハウを教わることで魔素操作を会得し、ついでに料理、薬学、アイテムクラフト、ステータス魔法に頼らない魔素操作による魔法の様な錬金術も100年で詰め込めるだけ会得した。対消滅の錬金浄化だけに関して言えばセレスティーナは一瞬とまでは行かないが30秒くらいで出来る様になった。

 更には錬金浄化ノウハウを女神教皇国で共有し、世界中の商会組織にも広めたことで、人類は瘴気にも魔モノモンスターポップにも対応できる様になっていた。


 薬学と錬金術式魔法はセレスティーナを大聖女という地位まで押し上げていた。

 これはノルンの目論見通りである。


 現在、セレスティーナと話している場所はデスフォレスト、ノルンの住処である。

 セレスティーナが定期的に訪れていた。

 女神からの神託を毎回もってくるのだが、わりと面倒ごとが多くノルンは億劫になっていた。


「今回の神託の内容っすけど、なんか女神様が宙域に結界張ったら魔モノモンスターポップの質が変わったみたいで、瘴気からじゃなく普通の魔素から魔力の吹き溜まりが現れて、それ経由で現れたら倒しても雲散しなくなって死体が残るっぽいんすよ。」


「それなら良いことじゃない」


「だから後は瘴気だけかなって思ったんすけど、そこから現れた魔モノってなんか前より凶暴になったというか無機質というか……なんか無鉄砲で強いんすよね。雑魚のが多いんすけど、魔獣と違って逃げないし、なんか世界中に魔モノが増えてやべえんすよね」


「は〜……それはそれで面倒になったってことね……」


 この世界の女神がやらかした。

 直接的な表現をセレスティーナは避けたがそういうことだろう。


「はいっす……でも、食料事情を考えるとコカトリスとかいうのとか、他に肉として食用とか家畜にしやすいのもいて考え方によってはアリなところもあるっす。冒険者需要も増えてるってオリヴィアちゃんが言ってました。」


 ちなみに永続転生少女オリヴィアは現在12才である。


「ほう〜それは気になるわね」


 ノルンは魔獣には意思があると感じていて、精神パスを繋ぎ会話が出来るか実験していた。だが、それを始めてからノルンは狩りが出來なくなっていた。元来の甘さ故のものだが魔獣を殺せなくなってしまっていた。

 そう考えれば今の状況はノルン的にはありだが、世界中に魔モノによる被害もあるだろう。


 ノルンは天秤にかけてみた。


 総合的にみてどっちがマシか。

 

 局所的な国壊滅、町壊滅の場所もあった前までの魔モノモンスターポップ、それは悪性魔素、瘴気によるものでもあった。

 今の状況は瘴気による魔モノモンスターポップではない為に国壊滅になるほどではないが魔モノに強弱はあれ多くなった。


 だとすれば今の方が若干マシなのかもしれない、とノルンは願うことしかできなかった。


「まあ商会に文明レベルを少し引き上げる様に言っておくわね。じゃないと魔モノに対抗できないでしょうね」


「ノルン先輩まじ世界牛耳ってるっすよね。」

「牛耳ってないわよ!」


 ノルンは牛耳っている自覚がない。

 結社組織ノルンファンクラブである商会ヴァルキュリアが勝手にやっているだけだと言う。


「わははは、それより先輩、当分泊まってても良いっすか?」

「どうしたのよ?」

「もう対消滅浄化しなくていいならって大聖女やめて来たっす。教皇が贅沢はダメだって自分で錬成した砂糖すら使えねえっす。もうやってらんねえっす!嫌がらせっす!」


 流石のノルンも可哀相だなと思い始めた。


「はあ〜まあいいんじゃない?でも後継は育てたのよね?」

「なんか神託おりた時に女神にお願いしたっす!新しい聖女をって!だから大丈夫っす」

「まあ一応気にかけておくのよ?」

「はいっす」


 

 ――数日後

 オリヴィア(12)がなんの前触れもなく神出鬼没にノルンの住処に現れた。

 どうやら文明レベルの引き上げに魔モノの調査の報告らしい。


「――であり、魔道具などのノウハウについては段階的に10年ほどかけてそのレベルまで引き上げます。」


「わかった、ありがとう。プリン食べる?」


「ノルンさまがなんかいつもより優しい!?」


 なんか自分より小さいオリヴィアにノルンは優しい気持ちになっていた。


「背のびたら態度変わるっすよオリヴィアちゃん」

「ちょ、セレナ!」

 長年の付き合いでノルンをよく見ていたセレスティーナだ。背の高さを露骨に気にするノルンを見抜いていた。

「背が伸びない魔道具を開発します!」


 それはそれで、成長出来る身体があるなら成長しとけと思うノルンだった。


「ところでノルン様、コカトリスの他にオークというものが人気で結構市場に魔モノ肉が溢れてるんですよ。最近じゃ魔獣が可哀相!って狩らない人もいるので魔モノは冒険者ギルド観点では好都合なのですよね。味も中々これが良くて」


 地球からの転生者ノルンとセレスティーナは顔を合わせて二足歩行の豚を想像した。豚の獣人の様なものを想像した。


「いま映像だしますね」

 オリヴィアがオークの映像を出した。

 正面からの映像で座ってる様だ。ただの豚?猪?みたいな感じだ。

 次の瞬間、 オークは立ち上がる。

 どうやら4足歩行の様だ――

 ――だが様子がおかしい


「う、なんかキモいっすね」


 後ろ脚がやたらと長くお尻がやたらと上に上がっている。

 まるで人間が4足歩行する時の様な。

 でも前脚、後脚も形はしっかり豚や猪の様には見える。


「まさかと思うけどさ」


 その瞬間、オークは――


 ――2本足でスクッと立ち上がった

 そのまま2本足で走り出したのである。


「……想像してたより人間みはないすけど、これはこれで恐怖っすね。2本足で走るって」


「そうですね、割と女性冒険者には人気がないですね。その……睾丸は素材としては需要はあるんですけどね」


「くっ殺もされたくねーっすね、これは」


 この後は三人でコカトリスを狩りにいくなどして畜産における品種改良が可能かなどの分析をしていた。


「そういえばノルン先輩、女神教皇国を挟んでその向こう側に遺跡あるんすけど行かないっすか?」


 唐突にセレスティーナが話を振ってくる。


「セレスティーナさん、それはなんの遺跡ですか?商会もしらないものでしょうか?」

「オリヴィアちゃん達も知らないと思うっすよ」


「まさかとは思うけどセレナ、貴女のルーツかしら?」

「正解っす!獣人工場やハイエルフ工場っす!あとは獣人の里種族毎にあるっすよ」


 リリシュタイン帝国の敵国だった国の戦争の遺産。

 ノルンは自分が撒いた種をみて、事実を知り、受け止めなけらばならない、そう考えていた。

 それが自分の全うする役割だとさえ考えていた。

 セレスティーナはそのことを知らない為にノルンはこういうの好きだろうなという感じで勧めてみただけだった。

 オリヴィアもすこし胸を打たれたような感覚があったがノルンが決めるのを待っていた。


「そこに行くわよ」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ここまで読んでくださりありがとうございます!


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ノルンがんばれ!強くいきて!

ノルンかわいい!

オリヴィアもっと出せ!

セレスティーナがんばれ!セレナ?あれ?


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