7 剣士と賢者はテイムする
「ここが気持ちいいの~??あ、待って待って!そんなに手がないから順番にね!」
玲は巨大なチーターもとい猫と遊んでいた。謎のドラゴンに追われていることすら忘れてしまうくらいに。
「楽しい~」
彼女は家で猫と暮らすのが夢だった。
一緒に暮らしていた家族が猫アレルギーだった為にそれは叶わなかった。世界がこうなってしまった以上、それも叶わず本州最北、日本で現在の状況が不明で且つモンスターが強く危険な緋ノ神山地まで調査任務として飛ばされた。
「なにが調査任務だ……邪魔者をてい良く処理しただけじゃん……」
彼女達はこの世界がこうなってから必死に生き延び、旧首都近辺では実力者として数えられていた。実力者故に権力者と衝突していた。
実際、権力者といっても現在の日本に政府は存在しない。モンスターにより滅ぼされた首都を奪還しコロニーを形成し、それらを束ね社会を形成している。だが彼女達はそれを政府とは呼びたくなかった。その組織を関東冒頭者ギルドと言う。
「レベル99にようやくなったのに君たちには敵わないんだよね、きっと。さっきはごめんね斬りかかっちゃって」
ごろにゃーごろにゃー
「んー、かーわいい」
デカい猫達にじゃれつかれながら彼女は現実逃避をしていた。
それにしても……
「そっちのドラゴンちゃん?ドラゴンくん?そっちで丸まってないでこっち向いてよ~」
さっきから猫達がドラゴンに何か話かけているような感じに思えた。
玲にはごろにゃーごろにゃーな猫達もドラゴンに話かける時は低く喉を鳴らしているようだ。威嚇しているわけではなくどうやら話かけているようだ。
ドラゴンが襲ってくるわけでもなく、どこか私達を怖がっているかの様にも思えた。遭遇した時のインパクトは「あ、死んだ」と思っていたくらいだったのに見た目の割に今はどこか臆病そうなイメージだ。
「猫ちゃんいるし近寄っても大丈夫かな……あのドラゴンに近寄ってもらえる?」
猫ちゃんの背に抱き着いたままの彼女は猫に指示を出す
猫はすくっと立ち上がり、ドラゴンに近づく。
猫だけで近づいても動かなかったドラゴンは明らかにスススと遠ざかっていく。
玲はこれをどこかでみたことがある。
「草むらにいるトカゲかな……」
なんど玲が近づいても大きな身体を引きづり逃げ続けるドラゴン。そんなドラゴンをみて玲は気がづいた。
「君、ケガしてるの?」
血の匂いが辺りを漂っていた。玲は照明魔道具を使い照らした。淡い光を放ち周囲の敵に察知されない野営に便利な魔道具だ。照らしてみれば巨体をひきずった跡には赤い血が滲んでいた。
「ちょっとまって!うごかないで!」
そう声をかけると猫達はドラゴンを囲んで動かない様にした。ナイス!と思いながらも玲はドラゴンに近づき気づく。
どうやらドラゴンは震えている様だ。傷は突然現れた別のドラゴンによるものだろう。左わき腹辺りから血が流れている。
「大丈夫だよ、怖がらないで。あまり治癒魔法は得意じゃないけど一応は使えるから。モンスターだけど大丈夫だよね?」
彼女はありったけのポーションをドラゴンの傷にバシャバシャとかけた。ドラゴンはビクっとしながらも唸る猫達に囲まれて耐えていた。
「ヒール」
淡く蒼い光が傷をつつみこみ完治までとはいかないが血はとまる。あとは自分の外套を引きちぎりポーションをしみこませて患部に貼り付けた。ポーションには消毒作用もあるし大丈夫だろう。
「ふいーこれでひと安心かな」
とここで玲は気づく。
「あれ、初めてこっち向いてくれたね。初めまして私は玲、よろしくね」
ドラゴンの震えは止まっていて、低く喉を鳴らした。正直、玲はビクっとしたがやさしくドラゴンをさすった。背中に映えた立派な羽が少しだけ羽ばたいた様にみえた。
それは犬が尻尾を振るかの様な、何かの返事をしたかの様に思えた。
「んふふ、こうしてみるとかわいいかも」
それから少しの間、猫に背をあずけうとうとしていると入り口から猫が2匹何かを引きづり現れた。目を閉じている内に外へ出ていたのだろう。
「あ、君たちご飯獲ってきたの?流石だね」
猫は玲の目の前に獲物を置く。
「あははは、ありがとう。でも今は解体するにも水場がないし無理かな。それに焼くにしても煙が出るとね……」
敵のドラゴンが来てしまう。
故に大丈夫だよと答えると猫達は獲物へくらいつく。ドラゴンの分も獲ってきたのかドラゴンもかぶりついている。
血の匂いに若干苦笑いしつつもレーションを取り出した。こんな世界になってから保存食は最も重要視されていた。故に出来上がった栄養万全の固形レーションである。
某カロリーなんとかの様な味わいでフルーツ味とプレーン味がある。味は悪くはないが普通の料理に比べると物足りない。若干の魔力回復と体力が回復したり傷の治りが早くなったりする効果はあった。
「ん……何この匂い……レイちゃん……お腹すいた……私も……」
「綾乃さんおきた?大丈夫?はいレーションとお水」
「ありがと。大丈夫。それよりこの惨状はなに?大丈夫?これ?」
「う、うん……この子達、私達にご飯用意してくれたんだけどここじゃ解体も出来ないしね……」
「……レイちゃんがモンスターと仲良くなってる???」
「えへへ!もう仲良しだよ~」
ブチブチ、バキ!ガツガツ!ブシュ!
血に慣れていない者がみると気を失いそうな惨状だ。
「レイちゃん……食べられてるのあれってブラックワイバーンだよね」
「う、うん……私達調査隊20人以上いて作戦を組んでもやっとのことで撒く事が出来たブラックワイバーンだね」
彼女達は現実逃避も兼ねてレーションを貪り食事を再開した。
うにゃーごろごろ
食事をした猫を眺めていると前足を口に近づけぺろぺろしている。
「ほんとデカい猫だね。虎の様なライオンの様なチーター??」
「ん~今は猫ちゃんにしかみえないけどネコ科ってみんなあんな感じなのかも?」
と話していると猫達が近寄ってくる。
いやいやいや
「ちょっと、猫ちゃん達ストップ!血!血がいっぱいついてる!」
猫は玲の制止に応えるがなにが?どうした?みたいな顔をしてよくわかっていないようだ。
「レイちゃん、水魔法で洗い流せないかな。」
「そうしようか、でも猫ちゃん水大丈夫かな。水かけて大丈夫?」
ごろにゃーとなき大丈夫だと言っている様に見える。言葉を理解しているのだろうか?
実際はぐるるにゃーとかなり低めに唸っているのだが玲フィルターではかわいらしくごろにゃーんである。
「綾乃さん大丈夫みたい」
「え!?ほんとに……?ま、まあやってみようか……だいぶ魔力を抑えて……と、ウォーター」
緩やかに水を綾乃が出し続ける。玲は猫達呼び寄せ順番に洗っていく。綾乃が持ち歩いている匂いのしないシャンプーとかも使ったが猫は大丈夫そうだ。良い匂いのするシャンプーはモンスターを寄せ付ける為、匂いのしないシャンプーはこの世界で冒険をする場合には必需品だ。
「ふーこれで綺麗になったかな……ドラゴンちゃんは……ケガしてるし今度ね」
ドラゴンは低く唸り返して羽を少しだけ揺らす。ドラゴンも猫達が洗われる様子をずっとみていたのだが興味があるのかもしれない。
綾乃が火魔法と風魔法を器用に使い分け温風を送り毛を乾かす。猫達は気持ちよさそうだ。
「獣臭がだいぶなくなったね。君たちも普段からしっかり洗った方がいいよ」
ごろごろと喉を鳴らし二人に近づいてくる猫達。
「だ、大丈夫?レイちゃん……」
綾乃はまだ慣れないようだった。
「大丈夫だよ綾乃さん!ほら」
と玲は巨大な猫に後ろから抱き着き顎をさする。恐る恐る猫に触るがこれが普通の反応だ。綾乃もさすっている内に大丈夫だと確信したのか猫に背を預けはじめた
「あーごくらくごくらくー」
「綾乃さん適応具合が前後でピーキーだよね」
「こんなにもふかふかなんだもん……それにしてもさ」
「それにしても?」
綾乃は思っていた。こんなにも人なつっこいモンスターがいるのだろうか?
「これテイムしてるんじゃない?」
「綾乃さんも思った?」
「最初は対峙した時からだったのかわからないけどね、攻撃してこなかったし。それか元からこうなのか。」
「うーん、どうなんだろうね……そうだ綾乃さん鑑定してみてよこの子達を」
「そうね~【鑑定】どれどれ?」
綾乃は一匹を鑑定した。
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鑑定Lv6 結果を表示します
種族:スカーレットタイガー
種別:-
名前:無し
性別:女
レベル:278
HP:105000/110000
MP:156900/168945
攻撃:10900
防御:7500
魔攻:5000
魔防:40000
俊敏:8000
【称号】
☆テイム可能です!
テイム序列
1
2
序列に載っている者は全員テイム可能です。テイムをすればお話が出来ます!
*主従関係はありません*
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「レイちゃん……この子テイムできるみたい……って
「綾乃さん獣王ってなに?」
「さあ……でもブラックワイバーン倒すくらいだし強いし獣王なんじゃん……?」
「ふーん、まあでも綾乃さんだけ?」
「一応、私もレイちゃんも二人ともテイムできるみたい。序列はレイちゃんが上だけど……ってあれもしかして【ステータスオープン】」
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種族:人間
種別:ヒューマン
名前:篠村綾乃
職業:賢者
性別:女
レベル:99
HP:7082/9999
MP:5695/13000
攻撃:20
防御:50
魔攻:3000
魔防:9000
俊敏:30
スキル:ツリーを開くと表示
詳細:ツリーを開くと表示
【称号】
地球人類で最速の若返り魔女
☆スキル:テイムを獲得しました。
☆テイム可能な魔獣が3匹います。
獣王スカーレットタイガー
獣王ホワイトパンサー
獣王ゴールデンレオ
テイムしますか?
見る度、苦笑いが出る称号だとひくつきながらも綾乃はスキル【テイム】があることに気づく。しかも全猫、獣王である。
「レイちゃん!スキル生えてるよ!テイム!なんで!?」
「本当だー……ふへへ、じゃあテイムしようか。」
猫ちゃん、猫ちゃんとぶつぶつ言いながら玲は近づいていく。
テイムしますか?
YES/NO
「YESにきまってんだろー!??」
「レイちゃん私もイエスにする~」
『……聴こえる?』
「ふわー!猫ちゃんとお話できる!??」
玲のテンションが爆上がりの中、突如洞窟の外から眩しい光が差し込んできた。
「なにごとー!??」
テイムした歓喜すらかき消す光と共に、爆発的な魔力を感知する。賢者で魔力感知に長けた綾乃は少し酔いそうになるがそれもすぐに止んだ。
全員で外に出ると幻想的で巨大な魔法陣が空に浮かんでいた。玲はその魔力に酔いそうになり慌てて自身の強力な認識阻害スキルを解除してしまう。
「わ!今のなに??」
綾乃は綾乃で玲が認識阻害スキルを解除したとたん、何者かに自身の場所を探られた気がした。
「レイちゃん……見つかったかも。さっきのドラゴンかな……」
なんていっているとフラグだったかのようだ。空から黒い塊が降ってきた。
さっき襲ってきた方のドラゴンだ。
一緒にいるドラゴンと種族は同じだろう、というか全く同じにしか見えない。でも一緒にいるドラゴンとは同じにしか見えないのに、どうしてこうも狂暴にみえてしまうのだろう?一緒にいるドラゴンは愛らしささえ感じるくらいに大人しいし感情さえあるのだろうと予想すら出来る。
せっかく猫をテイムしてごろごろにゃんにゃん生活が始まると思っていた矢先だ。人生はうまく行かないなと玲は諦めの境地に達してしまいそうになる。
「やばい……私、死ぬの?」
「レイちゃん、後ろに下がって!!私の中で一番の防御結界張る……!バフも……!けど……意味あるのかな……」
前に立ったここぞの時は勇敢な綾乃でもドラゴンを前にして絶望した。圧倒的な殺意とドラゴンの放つ魔力に力の差を思い知らされてしまう。
『後ろにさがって……』
ホワイトパンサーの猫が前に出る。
「
『え、私はユキって名前なんですか?』
スカーレットタイガーとゴールデンレオの2匹も玲を見る。この絶望的な状況で少しだけ気が和らいだ。
『私も名前欲しいニャ』『僕も僕も』
「にゃんですと!?語尾がニャ?もしかして音声的に僕っ娘?」
玲は現実逃避も兼ねて興奮していた。
『にゃーはにゃーって鳴くですにゃ』
『僕はメスだよ』
うっは……玲は鼻血を流した。
「レイちゃん……」
「赤毛の君は直感で
『私は茜にゃ』
『僕は皐月!やった!』
一緒にいたドラゴンも洞窟から覗いていたがのそのそと前に出始めた。一番強そうではあるが……
「君、ケガしてるし震えてるじゃん……無理は……とは言えないか……死んじゃったら意味ないもんね……」
何故かずっと黙っていた敵ドラゴンだがこっちのドラゴンを探していたのだろう。狂暴な目つきがまた更に強烈になり今にも襲いかかりそうな雰囲気だ。
敵ドラゴンは咆哮をあげた、それは全てに恐慌を与え、希望を打ち砕く絶望の様な音だった。恐らく魔力乗せた咆哮なのだろう。
こんなの勝てっこない……玲も綾乃もそう思っていた
その時――
――タタタタタタ……
誰かが走ってきた。
現れたのは小さな女の子。
なぜこんなところに?一人で?外国人?小学生?中学生?なんで動けるの?
二人の思考はシンクロしながら混乱しやっとのこと口を開く
「き、君……あぶな……いよ……」
「に……げ……て」
「おむえいんたぃあち、でぃえいんじょうぶか?こぅりえ、倒んすちぇあって良いのか?」
「「????????」」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここまで読んでくださりありがとうございます!
ノルンとクーフィーの活躍をもっと見たいぞ!
ノルンかわいい!クーフィーかわいい!
玲と綾乃がんばれ!
という方は
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