文化祭当日
文化祭当日。
響と奏音ちゃんと詩音は三人で文化祭を回るらしい。
俺もリハーサルの時間と本番以外は暇なので、バンドメンバーと色々見て回ることにした。
改めて回ってみると、色んなサークルがあることを実感させられる。
運動部や大学の後援会が出す模擬店でチョコバナナやら、たこ焼きやらを頬張りながら色々見て回る。
ダンス部のダンスは迫力があったし、演劇部の演劇は現代風刺劇で考えさせられた。
友達の大野氏が所属する漫画研究会のブースに寄る。
「梅村氏~」
「大野氏! 漫研、冊子作ったんだっけ?」
「そうでござる! 我も絵を描いていて……」
「マジですげえ! これ大野氏が描いたの⁉」
大野氏が描いたのは日常系の女子高生四コマ漫画だったが、キャラが可愛くイキイキと描けている。
「細かいところまで見られると恥ずかしいでござるが。後ろのバンドメンバーの方々も良かったら……」
「え? いいんすか?」
「俺きらら系の漫画も息抜きに見るんだよね」
そう言った福原と大野氏がオタトークに花を咲かせている時、俺は大野氏以外の漫画も読んでみようと冊子をめくる。
「あれ、梅村君?」
何処かで聞いたことのあるような声がして、その方向を向くと、中学時代のオタク友達・寺崎君がいた。寺崎君は俺を「けいおん」沼に引きずり込んだ張本人で、俺が受かりたかった高校に受かったオタクだ。以前、オタク仲間でカラオケに行った時は都合がつかず、会えなかったのだ。
「寺崎君……、中学卒業ぶりかな」
「そうだね。僕もこの大学通ってて」
「そうなんだ。俺文学部メディア芸術学科」
「僕は心理学部」
「学部違うと出会わないもんだな」
俺よりランクの高い高校に受かっても同じ大学に来ることもあるんだな。
「あのさ、俺バンドやっててさ、ベース弾いてんの。今回はサポートで入っただけだけど、普段はライブハウスとかでもやってて」
「へえ」
「良かったら見に来てくれよ。今日の16時から体育館で」
「うん。見に行くね」
本番5分前。
「リハーサル良かったから、その調子で」
「うう~、緊張するなあ」
「まあ初ステージだ。失敗したっていい。全力で行こうぜ!」
16時ちょうど。
ステージに上がる。
「軽音部所属バンドのエメラルドです。今日が初ステージで超緊張してるけど、頑張ります!」
ギターボーカルの生駒が若干震えている声で挨拶をする。
「聞いてください!」
1曲目 BUMP OF CHICKENの「Hello,world」
これは「血界戦線」というアニメの曲。かなりヒットしたから知ってる人も多い。初手の盛り上がりとしてはは上々。
「ここでメンバー紹介! ギターボーカル俺、慶! キーボード、拓! ドラム、広樹! そしてベースは今回サポートで入ってくれた「ことりノート」の篤志!」
「ことりノートのトゥイッター、インスタ、YouTubeチェックして下さい!」
俺はすかさず宣伝を挟む。
2曲目 DORSの曇天
銀魂好きと思われる人達が反応してくれる。
ステージから客席を見る。
響達や大野氏、寺崎君の姿を見つけて安堵する。
3曲目 MONGOL800の小さな恋のうた
さすが有名曲。皆のノリがいい。
文化祭終了後。
いつものファミレスで祝勝会をする。
「お疲れさん!」
「頑張ってた」
「まあ課題は色々ありますが、頑張りだけは認めましょう。お疲れさまでした」
ジュースで乾杯する。
「ステージってこんななんだな! すっげー緊張したけど楽しかった!」
「何個かミスしたけど止めなくて良かったっす」
「次もやってみたいって思えた!」
「まあ、楽しめたようで良かった!」
「梅村も今日までサポートありがとうな」
「いやいや、俺も貴重な経験ができてよかったよ」
「あ~、梅村と離れるの寂しい~」
「めっちゃ頼りになったっす」
「うんうん」
「ダメですよ。梅村さんはことりノートのものですから。あなた方は早く新しいベースを見つけるべきです」
「学内だけじゃなくてライブハウスとかで探すのもいいんじゃね?」
「ライブハウスって何か怖くて」
「大丈夫だって。今度一緒に行ってやるよ」
「本当頼りになる男だぜ~」
祝勝会は2時間程でお開きになった。
ケータイを見ると、久しぶりに寺崎君から連絡が来ていた。
俺達の演奏を見て感動したことが書かれていて、俺は嬉しくなった。
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ことりノート 夢水 四季 @shiki-yumemizu
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