新生活

ルームシェアしようぜ!

春休みになった。

俺と響はファミレスで駄弁りながら、これからの新生活について話していた。

大学は自宅からも余裕で通える位置にあるが、俺は自立するために実家を出ることにした。

「俺も実家出ようかな~」

「あのデカい家から出るのか」

 響の家は8人兄弟だ。

「うん。兄ちゃん達も大学進学のタイミングで家出てたし、俺もそうしようかなって」

「じゃあ、一緒に家探すか」

「おう!」

こうして、俺と響は家探しをすることになった。

「で、家探しってどうやるんだ?」

「どうって……。まずは、どんな家に住みたいか条件を考えて……」

「不動産屋とかに行くのか?」

「いや、まずはネット検索してからの方がいいかも」

「まず楽器可で防音設備がある所がいいよな……。で、大学からも近くて……」

「あっ、いいこと思い付いた! 俺達ルームシェアしようぜ!」

「へ? ルームシェア?」

「ルームシェアなら家賃も分割できるし、いいじゃん! 奏音ちゃんや詩音にも聞いてみようぜ!」

「ルームシェアって四人でってこと⁉」

「おう! いつでも一緒に練習出来ていいじゃん」

「そうは言ってもなあ……。奏音ちゃんは女の子だし……」

 とりあえず櫻井姉弟を「話があるから」とファミレスに呼び出した。


 1時間もしないうちに二人はファミレスに到着した。

「話って何ですか?」

「皆でルームシェアしねえ?」

 前置きも何もなく響は切り出した。

「「ルームシェア?」」

「ああ、いきなりごめんな。びっくりしたよな」

「ええ、まあ……、何でそんな話になったんです?」

「何でって、響の思い付きで……」

 そういえばだが、櫻井姉弟が、どんな家に住んでいるのは今まで聞いたことがなかった。

 家族構成とか、突然聞くのも失礼かな……。

「絶対楽しいって、ルームシェア!」

「う~ん、どうします、姉さん?」

「楽しそう、やってみたい」

「本当か、奏音ちゃん⁉」

「うん」

「姉さんが良いなら僕も良いですよ」

 という訳で、俺達4人のルームシェアが決定した。


「4人なら一軒家借りるって手もあるな」

「何かテラスハウスみたいだな」

「お前テラスハウス知ってんのか、意外だわ」

「まあ名前だけはな。男女でシェアハウスするんだろ」

「姉さんに恋愛フラグなんて立たせないですよ」

「今更、奏音ちゃんと恋愛しようなんて思わねえよ、安心しろ」

「だよな。奏音ちゃんは大切なバンド仲間だし」

「同じ家に住むにあたって、色々とルールを定めさせてもらいますよ」

「ああ、分かった分かった」

「それで、どんな家にするんです?」

「うん。それを今から調べようとしてる」

 俺の小さなスマホ画面に皆が集まる。

「えーと、4人だから4LDKの一軒家か」

 検索結果は300件ほど。

「俺の大学の最寄り駅は……」

 20件まで絞れた。

「15~20万円くらいかな、家賃は。一人5万くらい。お前ら大学行かないで暇だからバイトしてもらうぜ。詩音も高校行きながらバイト、出来れば奏音ちゃんもしてほしいんだけど」

「働きたくないです。それに姉さんを働かせるなんて以ての外です。あなた方二人で頑張って下さい」

「はあ⁉ 何バカなこと言ってんだ。俺達はまだバンドだけで食ってけるほど売れてねえの。バイトしないと家賃も払えねえし」

「働いたら負けかなと思ってます」

「何ニートみたいな言い訳してんだ、働け」

「私も、頑張って、働く」

「ね、姉さんを働かせる訳には……」

「バイト経験もあった方が視野も広がって、もっといい歌詞書けるかもしれねえぞ」

「う……」

「詩音、頑張って、働こう?」

「わ、分かりましたよ。働けばいいんでしょう!」

「えらいえらい」

 奏音ちゃんが詩音の頭を撫でてやっている。

 二人のバイトは後で探すとして、俺は内見の準備を進めていた。

「で、どの日空いてる?」

「ここならバイトも休みだし行ける」

「お、なら、その日で」

 内見の日取りも決まったし、今日はここで解散となった。

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