卒業式と復帰ライブ
推薦入試が終わる頃には、もう三年生は自由登校になっていて、進路が決まった俺と大学に行かない響や奏音ちゃんは学校に来る必要がなくなった。
しかし、復帰ライブを卒業式の数日後に控えているので、音楽準備室に集まって、曲の練習をしていた。
復帰ライブは新曲無しの既存曲だけで行うので、そこまで大変ではなかった。
「セトリも決まったし、後は軽く練習するくらいでいいよな」
「うん、それでいいと思う」
卒業式の日。
俺は普通に式に出て卒業証書をもらって、担任の祝いの言葉を聞き、卒業アルバムに一言を書き合ったりして終わった。
最後の練習のために音楽準備室に向かう途中のことだった。
「助けてくれ、篤志!」
追い剥ぎに遭ったかのような風貌の響が逃げ込んできた。
響は音楽準備室のドラムの裏に隠れると、ドタドタという足音を立てながら女子生徒の集団が通り過ぎて行った。
察するに第二ボタンやら何やらを求められて追いかけられていたのだろう。
「お前、けっこうモテるもんな」
同じバンドメンバーなのに、ボーカルばかりモテて羨ましい限りだ。
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
櫻井姉弟が到着した。
「お二人とも、ご卒業おめでとうございます」
「ああ、ありがとう」
「ありがとな」
卒業アルバムに詩音からも一言書いてもらった後、響が「やるか」と言って、最後の練習が始まった。
これで、この音楽準備室ともお別れだ。
そう思うと感慨深いものがこみ上げてくる。
最後の演奏が終わり、俺達は音楽準備室に向かって、お礼を言った。
「「「「ありがとうございました」」」」
ライブハウス・スターダスト。
「「「「ことりノート、ファイヤー!」」」」
「皆、今日は俺達の復帰ライブに来てくれて、ありがとう! ベースの篤志から一言!」
「皆に報告があります! 俺は、なんと……、大学に合格しました! 応援してくれてた皆さん、本当にありがとうございました!」
拍手が中々止まない。嬉しい。
「皆ありがとう! じゃあ一曲目! ディスカバリー!」
俺達の代表曲で初っ端から盛り上げる。
2曲目 「just do it !」
4人全員のラップ曲。リリックが乗っている。良い感じだ。
3曲目 「ダンデライオン・クライシス」
ここで春らしい一曲を入れる。ファンタジックな雰囲気に。
4曲目 「チアフルフラワー」
青春ソングで締め。
高校時代、最後の演奏を気持ちよく終えることが出来た。
大学生になっても頑張ろう。
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