文化祭ライブ

成績

「中間試験、かったるいよな」

「だな」

「俺ら軽音部じゃないから部活動禁止に当てはまらないのか」

「うん。それは良いことだな」

「いや、勉強に集中したいだろ。俺、前の期末の時、練習の方に熱入れ過ぎて成績下がったんだよ。それを親に言われて、今回は良い成績取らなならんのさ」

「大変そうだな」

「ていうか、響は勉強大丈夫なのかよ」

 今まで成績のことは聞かなかったが、こいつが頭いいイメージが微塵もない。

「成績かあ。俺の期末の成績見る?」

「見せてくれるのか?」

「うん」

 響は鞄をガサゴソとして、底の方から、ぐちゃぐちゃになった紙を発掘し、俺に差し出した。

「え~、え、やば」

 予想通りというか何というか、成績は悪かった。とてつもなく悪かった。

「ほぼビリじゃねえか!」

「いや~、何かごめん」

「俺よりも親に謝れよ?」

「う~ん、親はもう諦めてるっていうか」

「ていうか、お前、夏休み補習みたいなの行ってたよな」

「ああ、うん。赤点補習」

「どうすんだよ」

「でも出来ないもんは仕方ないしなあ」

「いや、授業ちゃんと聞いてれば赤点はない、って、そういえばお前、授業中に寝てたわ」

「眠いもんは仕方ないんだよ」

「仕方なくないわ。先生も泣いてるぞ」

「う~ん、どうしたらいいんだろうな」

「ほっぺたつねりながら意地でも起きてろ」


 練習前の簡易ミーティング。

 俺は危機感を覚えて、勉強について聞いてみた。

「で、響の成績がやばい訳だが、二人は大丈夫だよな?」

「私は平均点くらい」

「黙秘権を行使します」

「え、まさか詩音、その性格で頭悪いとか言わないよな? な?」

「黙秘権を行使します」

「詩音は成績悪い」

「姉さん……」

「だから、篤志に勉強を教えてもらいたい」

「え? 俺が詩音に?」

「梅村さんに教わるなんて嫌です」

「私じゃ上手く教えられない。成績上位の篤志なら行ける」

「え、梅村さん、成績良かったんですか?」

「毎回貼り出されてる。トップ20には入ってる」

「それは意外でした」

「俺も教わりたい!」

「お願い」

「ああ、もう仕様がないな。まとめて勉強見てやるよ」

それから練習の前後に勉強会を開くことになった。

中間テストまで、あと一か月、せめて赤点回避だ。

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