俺がベースを好きな理由
「篤志も仲間になったことだし、あと二人は欲しいかな」
「おい、俺はお前とバンドやるなんて一言も言ってないぞ」
「え、何で⁉ 何で⁉」
「まあ理由は色々あるけど。……まず俺には音楽の才能も知識も経験もない」
小学校と中学校の音楽の成績は5段階中3。上りも下がりもしなかった。カラオケもほぼ平均点。音楽のお稽古も一度もやったことがない。
「でもベースのキーホルダー付けてたってことはバンドに興味あるんだよな?」
「あれはっ、……好きなキャラが弾いてたのと同じモデルの……」
「きゃら?」
「……アニメの。け●おんって知ってるだろ」
「いや、知らない」
「はあっ⁉ 何で知らねえんだよ! バンドやりたいってのに⁉」
「俺アニメとかあまり見ないから」
ああ、そういうタイプね。本当にバンドがやりたい陽キャか。やっぱり俺とは全然住む世界が違う。
「俺みたいなアニメに憧れてバンドに興味持っただけのにわかがいても邪魔だろ。もっと真剣に音楽やってる奴を頑張って見つけてくれ」
「待てよ!」
「じゃあな。もう誘ってくんなよ」
追いかけて手を引いてきた小鳥遊を乱暴に振りほどく。
小学校の高学年から親に塾に入れられた。勉強して良い大学、将来は優良企業か公務員になってくれと、ずっと言われてきた。ガリ勉で友達もいなかった。中学二年のある日、深夜までテスト勉強をしていた。息抜きをしたくて、ほんの気まぐれでテレビを点けた。そうしたら、女の子がバンドをするアニメをやっていた。そこからけ●おんにドはまりし、クラスのオタクと仲良くなった。おススメのアニメやラノベを教えてもらったり、一緒にアニメイトに行ったり、カラオケに行ったり、毎日が楽しかった。
そんなことをしていたら第一志望の進学校に落ちた。父親には怒鳴られ、母親には悲しまれた。ちなみに、そのオタク友達はちゃっかり俺の第一志望に受かっていた。ふざけるな。正直にそう思ったけれど、悪いのは俺自身だ。オタクだけど勉強できる奴なんて山ほどいる。俺はただアニメに逃げていただけだ。
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