夜空の彼方

広井 海

序章 夢の彼方

 私の名前は常陸ひたち 未来みらい。職業は小説家。割と有名な出版社で7冊ほど本を出していて、そのうちの一冊は五万部ほどの売り上げを出した。ペンネームは天下野けがの 来未くるみ


 そんな私には小さいころからおかしな能力がある。それは予知夢を見ることが出来るという能力だ。小さいころから夢で見た光景や人物、現象などが100%の確率で起こるというものだ。


 私は先日、ある夢を見た。それは上館駅という駅の前である少年と出会い、カフェで一緒に会話をしている光景だった。


 少年は制服を着ていることから中学生か高校生ということがわかる。私は夢でその少年に小説のネタとしてインタビューをしていた。おそらく次のほんのネタが浮かんでこなかったのだろう。


「何か最近面白い話とか出来事とかあった?」


「う~ん…ちょっと変な話なんですけど…いいですか?」


 少年は数秒考えたのちに口を開いた。


「全然、大丈夫だよ。どんな話でもいいよ」


「それじゃ……」


 そういって少年は話始めた。少年の話は何とも興味深く私は聞き入ってしまった。


 ある日、夜中の学校の屋上で髪が光輝いている少女を見つけた。その少女は誰にも認識されない。なぜか少女と初めて会った気がせず、その少女を助けたいと思った少年は何とか少女の病気?を治そうと解決策を探っていくうちにあることに気づく……。



 


 少年の話は30分近くあったが、私は退屈など感じなかった。その話を聞きながらパソコンにその話の要点を書きあげていった。


 少年の話だけではなく他にもさまざまな話をしていた。


 最後に私は…


「もし、きみのその話を小説や漫画にするとしたらどんなタイトルにする?」


「えっ?…そうですね……」


 少年はしばらく顎に手を置いて考えていたが、ハッとした顔と共に口を開いた。


「……〇〇〇〇〇ですかね…」


「いいね」


 その瞬間、私は夢から覚めた。


 私は逸る気持ちを抑えきれず、寝間着のまますぐに執筆活動に取り組んだ。夢の内容を小説のネタにすることは今まで何回かあったが、そういった場合は夢の内容が現実で起こってから執筆を始めていた。


 しかし、この時は次回作の内容が浮かばず焦っていた上、その物語にとてつもない魅力を感じてしまった私はいてもたってもいられずに執筆を始めてしまった。


 夢の内容なので所々、記憶が曖昧な部分があるがそこは創作で補っていく。


「タイトルはどうしようかな…」


 私は一週間ほとんど寝ず、食事もとらずにずっとパソコンのキーボードを叩いていた。ここまで引き込まれる物語は私自身も初めてだ。私は小説を書きあげてからタイトルを付けることが多いが、夢でタイトルを言っていたような気がするが、思い出せない。


 仕方なく、仮のタイトルとして「きみそらあおかげ」という自分で考えたタイトルを付ける。タイトルはいつか起きる未来で少年からもう一度聞けばよいと思った。


 そうして私は一旦データを保存して、小説を閉じる。

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