9月

 まだまだ日中は暑い日が続いてるけど、朝と夜は随分と涼しくなってきた。ただ、季節が変わったところで、家からほぼ出られないという状況は変わらない。


 パソコンを起動して、在宅の仕事を紹介しているサイトを開く。いい暇つぶしになるから、最近の日課になっている。


 どれどれ、今日はどんな感じかな。


 掲載されている仕事の大半には応募ができない。専門的な知識が必要であろうプログラム作成だったり、取材が必要そうなライターの仕事だったり。いつどうなるかわからないから、日数がかかる仕事も難しい。必要な資格をとろうにも、記憶がなくなれば全部無駄になるだろうし、相手にも迷惑がかかる。そんな中でまともにできそうなのはデータ入力の仕事くらい。何もやらないよりはいいかとやっているけど、企業説明を配信で参加するだけとか、本当に仕事なのか?って思うのもあった。もらえる金額だって、仕事で稼いだ額というよりは手伝ったご褒美、おこづかいみたい。


 せめて、外に出られたらな…。


 外に出ようとする事。これも日課になっている。今のところ、具合が悪くなるところまでがセットという残念な日課になっている。


 夕食を済ませた後はテレビを眺めて過ごす。これも日課。ここ2ヶ月程度、映っている人を見ても何かを思い出す事はなかった。今は日々のニュースや気温を眺めて過ごしているだけ。バラエティーやドラマはあまり見ない。


 21時頃、ばあちゃんが「そろそろ寝る」というのに合わせて自分も部屋に戻った。


 いつでも寝られる体勢になって、本を手にとった。この部屋に置いてあったSFものの小説だ。最後まで読んでみてわかったが、部屋にあったのはごく一部だけ。まだ物語は終わっていなかった。続きが気になり、ネットで調べてみると十冊以上は発行されていた。発行された年が古いだけに探して購入するのは大変だったが、全て揃えた。


 メインのストーリーとしては、帝国軍と反乱軍みたいな二つの陣営に分かれての戦いを書いたもの。空想上の兵器で戦ったり、いろんな星に移動したり。現実でそんな事はないだけに読んでてワクワクする。そんな中、割と重要なキャラクターが記憶を失うような事故が書かれていた。


 このキャラはどうなるんだろう。記憶は戻るのか?物語だし、きっと戻るよな?


 このまま読み進めればわかるんだろうけど、似たような状況だからか、このキャラの行く末がとても気になった。

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