第7話 建国記念日


2日後夕方、VAR本社ビルにて。


「御足労、誠にありがとうございます。お忙しい黒野様の貴重なお時間を・・・」


「世辞は良い。どのみち、2日間は所用で外出していたしな。ではライブ配信とは、何を行えば良いのかな?」


「普段通りの行動を動画サイトにてリアルタイムで配信を致します。ゲーム内では尊(ミコト)が案内を行いますので、それまではゲームをお楽しみ下さい」


「そうか、それでは任せる。」


ヘッドセットを装着し、リクライニングチェアに腰掛ける。


「閣下、お帰りなさいませ。ゲーム内では約10日ほど経過しております。その間に世界樹の育成を進めておきました。クワン様は街の作成に取り掛かっておりました。それでは本日のご予定をお伝えいたします。」


「ふむ。尊(ミコト)よ、私は何を行えば良いのかな?」


「閣下、動画を配信してからアクセス数が予想以上・・・いえ、想定の範囲外のフォロワー人数、視聴数になっております。ここでクロノス王国の国王として国民に向けて閣下よりお言葉をお願いいたします。本日のライブ配信は建国のスピーチになります。」


「わかった。時間が経ったら教えてくれ。その間に執務と世界樹の様子を見てくるとする。尊よ、クワンを呼んでおいてくれ。」


ゲーム内で10日ぶりに見る世界樹は、私の身長をはるかに超え、屋敷を覆い隠すほどの立派な大木へと成長していた。



「閣下、お待たせを致しました。クワンめがここに参上しました。」


「世界樹も立派に成長し国のシンボルとも言える国樹になったな。クワンよ、十日間の国内の進捗状況を教えて欲しい。」


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クワンから城壁の進展状況や、区画整理など聞いていく。クワン曰く、眠らなくて良い体と無限に使える魔力のおかげで国を囲う城壁は一周したとのこと。森からの脅威に怯えなくて済むと言うことは民にとっては心安らぐであろう。


「閣下。そろそろお時間でございます。屋敷の前に国民が全員集まっております。ライブ配信もスタートいたします。」


「では、皆の前に行こう。」



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屋敷前



指令台が用意され、私はその上に昇る。

台の横にはクワンが執事の装いで控える。


クワンが皆に聞こえるよう声をかける。

「皆の者、クロノス閣下からのお言葉である。傾聴!」


まだ少ない人数だが、大事な国民である。

全員の顔を見渡す。皆良い顔をしている。


私は指令台の上から、語りかけるようにスピーチを始めた。




「皆が私を王にと選んでくれた。

 私は皆の為の代表である。


 難しいことは、私は言わない。

 私は皆に約束をする。



 子供達が飢えない暮らしを。

 大人達が恐れない暮らしを。

 老人達が怯えない暮らしを。



“この国が豊かになることを約束する!”


 私は皆の為に働く。

 皆は自分の為に動け。


 子供達よ、よく学べ。

 大人達よ、よく働け

 老人達よ、皆の手本になれ



“これからは私が皆を導く!”


 皆は自分自身を信じろ。

 皆は隣の仲間を信じろ。

 皆はクロノスを信じろ。


“今日、この時から王国の歴史は始まる!”


 皆は流民の末裔ではない。

 皆は王国の国民である。


“我は世界樹に誓う”


 共に進もう。

 共に戦おう。

 共に笑おう。


“今日ここにクロノス王国建国の日とする”」

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