第五話(06) 僕、何かやっちゃいましたか?
アラームじゃない。誰かからの電話だった。画面に表示されているのは、目堂さんの名前。我に返って出る。
「目堂さん?」
『よう、悪しき魔物め!』
目堂さんの声じゃない。やたらと強気で、偉ぶったような声。
でも、聞き覚えはある。
いやでも? 嘘でしょ? この声って……。
僕は顔を歪めながらも、一応尋ねる。
「あ~……もしかして、賀茂さん? ごめん、何の……キャラ変……?」
『悪しき存在が、生意気な口をききやがって』
信じられないことに、賀茂さんで間違いがなかった。
いつもの賀茂さんはどこに? あの大人しくて、小動物みたいな賀茂さんは?
反抗期とか、そういうレベルじゃない!
『近くにいるんだろう? ふふん、狩人には全てお見通しだ……蛇女を助けたかったら、来るがいい!』
そして、もう信じるしかないけど、やっぱり賀茂さんが『狩人』なんだ……。
通話はそこでぶちっと切れた。僕はかけ直す気力もなかった。
「……僕、今日だけで一生人間不信になっていいと思う」
「ごめぇん……」
井伊も、賀茂さんも、裏があったわけである。
「あいつ、お前も目堂も退治する気みたいだなぁ」
井伊は廃ビルを見上げる。入り口をみれば、割れたガラス扉が外からの空気を吸い込んでいた。
「でも……行かなきゃ。罠があったとしても」
間違いなく、罠はあると思う。賀茂さんは誘い込んでいたし。
それでも、目堂さんがここにいるのなら。
僕は目堂さんの友達で。
僕は目堂さんの仲間だから。
仲間が困っていたら、助けたい。
「俺は途中までならついて行くよぉ! ――本当は最後まで行きたいが、下手に動くと仲間にばれるかもしれなくてな……」
「そういうのは……なんだかすごく、わかる」
そうして僕達は廃ビルの中に入り、先へ進んだ。上の階から物音がする。崩れそうな階段に気をつけながら、先に進む。
そうして、最上階に来た――あっという間に、来た。
大きな部屋が一つある階のようだった。その部屋の中から、声がする。僕のいい耳が、誰の声か判別する。目堂さんと……賀茂さん。
……着いちゃったんだけど。
「罠とか……何もなかったね」
僕が漏らせば、井伊が。
「あったけど……賀茂さんそこまで力なかったというか、キューの力の方が強くて、色々仕掛けてあったけど、何もできなかったみたい」
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