第四話(08) ついにやってしまった……!
* * *
ワンチャン、家に連絡されないんじゃない?
――という淡い期待も虚しく、ばっちり連絡された。友達の家に泊まっている、ということだったけれども、連絡もされてしまったし、僕は自宅に帰るしかなかった。
「久太郎!」
帰ってくるなり、母さんが飛び出して来る。それから、
「――久太郎、どうしたんだ、夜中に散歩なんて……」
父さん。僕と同じで、目が見えないよう、分厚い前髪で隠している。
二人とも困ったような顔をしていた。だから僕は――自分が、すごく悪いことをしてしまったのだと思う。
「ご、ごめんなさい……」
騒ぎを起こしたくなかった。いい子でいなくちゃいけなかった。
僕は吸血鬼の末裔。吸血鬼は悪い怪物。
だから僕は、いい子にしていなくちゃいけなかったのに。
「久太郎、お前、女の子と散歩していたらしいが……」
不意に父さんがそう口を開いたから、僕はきっ、と睨みつけてしまった。
「変なことはしてない!」
自分の怒鳴り声で、我に返る。僕はなんて奴なんだろう。
「僕は……その……ごめんなさい……」
僕はそのまま自分の部屋に向かったけれども、両親に止められなかった。
部屋に入って扉を閉じても、僕の耳は、リビングで何か話す二人の声を拾っていた。うっかりするとその内容が入ってきそうで、僕は耳を塞いで待った。
ああ、僕は、いい子にしていなきゃいけなかったのに。
――しばらくして、スマホが光っていることに気付く。目堂さんからメッセージが来ていた。
『ママとパパに笑われちゃったぁ~』
『あとね、愛佳が何で自分も連れて行かなかったんだって、すごい怒ってる~』
目堂さんが羨ましかった。
【第四話 終】
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