ファンタジー短歌集~妖精のうた~

辻原僚

廃桟橋にて

――釣りの最中、海底からわたしを誘う声がする。


たましいを自ら喰らうような朝、きれいなうたは遅くきこえる



釣ったあとに逃がしてやった小魚は水に疲れて流れていった



ながく、ながく座っていれば亡霊と噂されてもしかたがないな



根がかりの鈍い釣竿もちあげて風が染み込むような夏瘦せ



蚊がくる。漠然と来る。まっすぐな空を見ているときに限って



ひとつかみ取っておいたら忘れずに食べるつもりで、咲いてしまった



降るのだから雨に降られる。ありもしないもとの姿になれる気がして



膝の上に嵐がくればメロー、波は傷のようだね、重なるんだね



一瞬の小鳥が鳴いた閃きに桟橋とわたしだけ残された



私は起きていて魚を殺す方法です。朝一番に沈めておくれ

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