第145話 「天ぷら」は西洋料理?

 フジヤマ、ゲイシャ、スキヤキ、テンプラ……外国人が覚えていそうな日本語の羅列ですけれど、実は和食代表の「天ぷら」は日本発祥の料理ではありません。


 諸説ありますが、16世紀に、ポルトガルの宣教師から江戸に伝わった、西洋式の揚げ物が発祥らしいです。


 教会から伝わった料理ということで、スペイン語の「寺」を意味する「テンプロ」から、あるいはポルトガル語の「調理・調味料」を意味する「テンペロ」、他にもポルトガル語の「四季に行う斎日」を意味する「テンポーラ」が、「てんぷら」の語源になったと言われています。


 江戸時代の1669年の書物『食道記』に、「素材に衣をつけて、油で揚げる」料理として、「てんふら」という名称が文献に登場します。


 最初は屋台で、揚げたての品を串に刺して立ち食いする、庶民の文化だったようです。幕末近くになって、天ぷらは店舗で提供されるようになり、明治に入ると高級料亭などで食べられるようになりました。


 高級なお座敷で、目の前で揚げてくれる天ぷらには、衣に卵黄を多く使って黄色っぽく仕上げた「金ぷら」、対照的に卵白を多く使って白っぽく仕上げた「銀ぷら」など、変わり種もあったようです。


 変わり種の天ぷらと言えば、私、天ぷら専門店で「アイスクリームの天ぷら」を食べたことがあります。


 空気を含む衣で素早く揚げると、衣が断熱層となって内部に熱が伝わるのが妨げられ、高熱の油の中でもアイスクリームが溶けないのです。

 揚げた後、すぐ食べないと、内側に熱が伝わって溶け出してしまいますが……。


 天ぷらの衣の食感の奥に、冷たく甘いアイスクリーム、という不思議な口触りと味わいでした。

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