第82話 ノーベルは自分の訃報を見た

 ニトログリセリンを使用した爆発物「ダイナマイト」。


 語源はギリシャ語で「力」を意味する「Dynamis」。


「力強い」を意味する「ダイナミック」なども、同じ語源の派生語です。


 さて、そのダイナマイトの発明者、スウェーデンのアルフレッド・ノーベル。


 自身の名を冠した「ノーベル賞」設立者でもあります。


 彼が、「ノーベル賞」を設立したのには、理由がありました。


 彼は8人兄弟でした。


 フランスのある新聞社が、ノーベルの4番目の兄が病死した、という情報を取り違えて、「ダイナマイトの発明者、ノーベルの死」として、新聞で訃報記事を掲載してしまったのです。


 その時の見出しが「死の商人、死す」。


 安全に土木工事を行えるように発明したダイナマイトで、巨万の富を得たノーベルでしたが、同時にそれは戦争に転用できる兵器の発明でもありました。


 この新聞記事にショックを受けたノーベルは、自分の死後、どのように自分が評価されるのか気に掛けるようになり、遺言状にこう記します。


 “私の遺産で、人類の利益に寄与した人々に賞を与えたい。”


 こうして、平和思想の普及と、科学進歩のための「ノーベル賞」が誕生したのです。


 ノーベルはダイナマイトの特許を取る際に弁護士に依頼し、ゴタゴタと揉めた経験から、弁護士をあまり信用しておらず、この「ノーベル賞」に関する遺書は、弁護士を使わずにすべて自分で書き、自分で遺産の指示をしました。


 それゆえに、法的な面では不備もあり、後見人たちは大変な苦労をした、という話です。

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