第77話 織姫と彦星は、怠けたので別れさせられた

 この雑学エッセイも、77番目になりました。


 そして、明日は7月7日、七夕です。


 七夕といえば、織姫と彦星のカップルが1年に1度だけ会える、ロマンチックな日……と勘違いしがちです。それは一面にすぎません。


 あるところに、機織はたおりの仕事をしている美女・織姫がいました。


 織姫は、「天帝」という神様の娘。

 神様たちの着物を機織り機で織るのが仕事です。

 恋人も作らず、熱心に毎日働いています。

 それを見た父・天帝は、天の川の向こうに住む、真面目な牛飼いの青年・彦星を引き合わせます。


 やがて2人は結婚しました。

 結婚してからというもの、今まで働き者だった2人は、遊んでばかりで、全然働かない怠け者になってしまいました。


 神様たちの着物は新しく織られないので、ボロボロに傷んでいくばかり。

 彦星が管理していた牛も、放っとかれて病気になってしまいます。


 怒った天帝は、2人を天の川の両岸に引き離し、会えないようにしてしまいました。


 悲しんだ2人は泣き続け、それを見た天帝は、「結婚する前みたいに一生懸命働いたら、1年に1度だけ会わせてやろう」と約束しました。

 2人は心を入れ替えて、また働くようになったのでした。

 そして2人は、1年に1度だけ、天の川を渡って会うことが許されました。その日が「七夕」というわけです。


 結婚してからも、普通に働いていれば、神の怒りを買うこともなく、引き離されることもなかったんじゃないの?

 仕事ひとすじで、異性との接点がなかった若いカップルが、結婚後に仕事を放棄して「遊んでいた」……外出もせずに室内でイチャイチャラブラブしていたんじゃないだろーか!? 

 そして、娘に男を紹介したのが父親なのだから、父親も「人を見る目がなかった」ってことだよな? 

 自分の任命責任も負わずに、一方的に夫婦を引き離すなんて処罰が重すぎないかー!?

 もっとマトモな男を紹介していれば、結婚後に激変することもなかったんだよ!


 男を知らない箱入り娘に、父親が紹介した結婚相手がロクデナシだったら、父親も「すまん…」って少しは罪悪感を感じてもいいんじゃないのかって話。

 

 それを「悲恋の物語」みたいに飾り立てちゃって! まったくもう! 仕事サボッてたバカップルの自業自得エピソードじゃないか!


 ……なんて、いろいろとツッコミたくなりますが。


 これは、中国の伝承や、日本の昔話などがミックスされて出来たお話らしいです。


 日本には奈良時代に伝わってきて、江戸時代には「七夕しちせきの節句」として庶民の間にも文化として広まっていきます。


 もともと日本には、機織り娘が神様のために着物を織ってお供え、豊作を祈る「棚機津女たなばたつめ」という伝承がありました。

 この「棚機たなばた」の発音が、「七夕しちせき」と合わさり、「七夕たなばた」という読み方が当てられた、と言われています。


 短冊に願い事を書くのも、昔の人が、織物の上手な織姫にあやかって、「物事が上達しますように」と、お願い事をしたのが始まりだとか。


「芸事」が上手くなるように祈る行事であり、「宝くじに当たりますように」「嫌いな上司がどうか異動しますように」「家事を手伝ってくれないし浮気するダンナに天罰を!」「おおきくなったら、かめんらいだーになりたいです。」とか書くのは、筋違いというものです。

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