第62話 ニオイの強いもの

 都市ガスやプロパンガス、日常の中で使うガス製品の「ガス」は、本来は無臭です。


 ですが、可燃性である性質上、ガス漏れなどを見逃しては火災や爆発事故に繋がります。危険にいち早く気づくために、人体へ毒性のない「くさいニオイ」が意図的に付けられているのだそうです。微量でも分かる、不快なニオイが。


 これがラベンダーなどの心地よい香りだったら「あらいいニオイ」とクンクンやってる間に死んじゃうかもしれませんからね。

「うっ、なんかくっさー! こりゃヤベエぞ!」と、不快なくらいでちょうどいいのです。

 

 美味しいけど、強烈なニオイがするため、敬遠する人も多い「果物の女王」こと、ドリアン。

 ホテル内や飛行機内には持ち込みが禁止になっているほどです。


 採れたての新鮮なドリアンは、臭くないのだそうです。

 ニオイの原因は含まれている硫黄化合物。

 実っている木から切り離して収穫した24時間以内なら、まだその独特の強いニオイは発生しません。


 ドリアンの原産地・マレーシアへ飛び、採れたてを食べてみると、甘く芳醇な味わいで、マンゴーにも似た風味だそうで。

 ただ、臭くない採れたてのドリアンを食べても、時間が経つと胃や腸の中でニオイが発生し、自分の吐息や体臭が死ぬほど臭くなるそうなので注意が必要です。

 そうなったら、手で鼻や口を押さえても自分から匂ってくるわけですから、どこにも逃げられない地獄ですね……。


 ドリアンを超える、「世界でいちばん臭い食べ物」こと、魚のニシンを塩漬けにして発酵させた缶詰・シュールストレミング。

 スウェーデンが発祥で、大量に捕れたニシンを長期保存するため、塩水に漬けたのが始まりだと言われています。


 このシュールストレミング、ニオイを嗅いだネコがショック死した、嗅覚に優れた犬が嘔吐した、化学兵器と誤解された、などホントーかウソかわからない都市伝説めいたものも広まっていますが、缶詰の表面には「必ず屋外で開封して下さい」と但し書きされているほどで、二十メートル離れていてもわかるほどの強い強い強いニオイがあるそうです。

 缶詰からはねた汁が衣服につくと、強いニオイがいつまでも取れないため、捨てても良い服を着てから缶詰を開ける、とか。


 食べた人の話では「ドブ川の魚をドブ川の水ごと口に入れた感じ」「夏場に一週間放置した生ゴミみたいな香り」「鼻がバグる」など、強烈な体験は人を詩人にするようですね。


 余談ですが、「刑務所に入る」ことを「くさい飯を食う」なんて表現しますが、あれはメシ自体がくさいのではなく、刑務所の狭いオリの中ではトイレのすぐ横で食事する生活なので、「くさい所でメシを食う」言い回しから来ているようです。

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