25.実験、実験、作動。
昨日は宿に帰ってきて魔法陣の本と、魔水晶の本を熟読した。
途中ニコちゃんにいつもの洗浄魔法をかけてもらい、この宿の魔法陣事情を聞いた。
枕の誘惑亭に限らず、民家含めて全ての場所で、トイレと水道は洗浄と循環の魔法陣が完備されてるらしい。水道工事がいらないファンタジーだよなー。代わりに水道工事業者ならぬ魔法陣業者がいるみたいだけど。
実は枕の誘惑亭はお風呂は後々増築する予定で裏庭が広くとられているらしい。
しめしめ。最終実験にはもってこいだな。失敗したら元に戻すからって、場所提供してもらおう。
ーーさて。本には基本から少し複雑にした魔法陣の数々が載っていた。
魔法陣はどれも最終的に魔水晶に行き着く設計だから、結局魔水晶がないと始まらないわけだ。
んじゃらば、と先日空になった角ウサギの魔石を取り出す。
えー、圧縮×圧縮だろ。
魔石を念動力で浮かせて、上から下から圧縮をかけて、魔力を圧縮するようにギュウギュウと入れて行く。
ーーーおっと、ヒビ入った。
念動力を止めて、手の中に転がるひび割れた角ウサギの魔石。
ヒビ割れた所は、鉱石を割った時みたいな独特の煌めきがあった。
鑑定をしてみる。
【魔鉱石】
魔力の詰まった鉱石。
魔水晶の出来損ない。
残魔力:600
「鉱石になっちった。ーーーそして出来損ない......方向性はあってるって事?ーーーー地球でいえば水晶って石英の透明なのだろ。石英って鉱石だろ?あ?鉱物?ーーどっちでもいいや。とにかく似たようなもの。でも鉱石どまりなんだ.....」
ブツブツ独り言。喋って整理する事ってあるよね。
地球の鉱物ってマグマが冷えて固まったとかなんかなかったっけ。
え、熱も関係するの?その後の冷やすのもか。流石に宿の一室でやる事じゃないな。ーーでも転移でいちいち移動するのも面倒い。
少し考えて、鉱石になった魔石の周りに結界魔法を施す。その中で高温のーー出来立てのマグマは1400度くらいまで上がる筈なのでそのくらいの高温をイメージし炎を生み出し、魔鉱石を包む。更に圧力をかけながらドンドコ魔力を注ぎ込む。ーードロリと溶けた。これを今度は冷やす。ゆっくり冷やさなきゃいけないんだけど.....待ってられないので結界魔法の中だけ時間経過を早める。炎をだんだんと弱めていき、薄らと温度を下げて行く。だんだんと魔石だったものが形作り、結晶化してきた。もう他の物質がない状態までなると、時間経過と結界魔法を解除する。
鑑定魔法発動!
【魔水晶(小粒)】
圧縮された魔力が詰まった水晶。
残魔力:6000
「ーーできた!ーーけど小粒ぅ?あ、元が角ウサギの魔石だからか。えー。他の空の魔石今ないや。ーーまぁ、残魔力は6000まで延びたし、元が蓄積できた魔力が60だから単純に10000%増えた事になる。おぅ。そう考えると凄くない?圧力ぱねぇ。と言うかファンタジーぱねぇ。こりゃ人口でできないわ。魔力∞の俺しかできないわ!」
実験の結果、人口で作成は無理と判断。でも空の魔石は溜まっていく一方だと思うので、作成方法も作成できる事も秘密の方向でいこう。
主にメンバーだけの秘密にしてもらおう。
では次の実験。
魔法陣ですね。まず魔法陣を刻む土台が必要だ。水漏れない箱型......いつかの本の中で漁作業手伝った時に魚入ってたステンレスのバット2枚あったな.....。
異空間から取り出し、ちょっと臭ったので洗浄魔法を施す。
うん、綺麗綺麗。
魔法陣の本に載っていた風呂の魔法陣のページを開いて形を確認。本を見て気付いたが、皆んなが洗浄と循環の魔法陣、と言ってるものは、水と光と風の3種類の魔法が組み合わさった魔法陣だった。効果からの名前付けだ。考えれば洗浄魔法って水消えるから、風呂だと困るよなぁ、と妙に納得した。
さて、魔法陣をしっかり記憶。こんな時瞬間記憶は便利だ。細部まで記憶出来る。じゃなかったら延々と書き取りしてから挑戦したな。
魔力で線を刻むのは、指先から線が出るように....なんだ線って。ーーーうーんと、レーザーだな。レーザー加工のイメージで。魔法陣は言わば一筆書きだ。英語の筆記体のように文字が繋がっていて円を描くようになっている。円の最後はそこから終点、魔水晶にいきつくように線が延びて、魔水晶のポケットになるようにまた円で終わる。魔力込めながら複数人で作業してるって話だから、途中切れても繋げれば平気なんだろう。
風呂を設置したいなら、男女別だから2つ必要になる。更に洗い場も必要だろうから、8つ8つの16個プラスで、全部で18個だ。全ての終点を魔水晶の円にくっ付ければ魔石は1つですむようだ。ふむふむ。
いざやろうとして気付いた。
ーーーこれ、バットの中に縮小版やるのは細かすぎて無理だぞ。
こう、1つ描いて、コピー&ペースト&縮小みたいにできないかね。
確か生活魔法に念写あるよね。念写と縮小を掛け合わせた魔法、出来ないかな。
ーーー誰も見てないところでやればよくね?
面倒くさくなったとも言うが、いーのだ。
早速1つ魔法陣を描く。これをまず魔力を注ぎながら念写魔法発動。
これでお風呂の2箇所完成。
次にまた魔力を注ぎながら念写魔法を発動。これを縮小して洗い場を想定した箇所に設置。
次に縮小したものにまた魔力を注ぎながら念写魔法。これを15回繰り返す。最後に魔水晶ポケットを作り、それぞれから線を伸ばす。
「ーーー出来た!」
仕上げは魔水晶ポケットに魔水晶を入れれば発動ーーーしたらただ水溢れるわこれ。
終わった気になったわ!アホか!と自分に突っ込んで、横に置いておいたもう一つのバッドを掴み、錬金する。こことここは風呂ー、と2つ囲みを作り、あ、下通したら漏れね?と描いてしまった線を分解、上を通す。イメージは大理石だけど、ステンレスだからただの囲みだなー。檜もいいよね。残りの素材は半分。あとは洗い場。
チマチマと1つ1つの魔法陣と繋ぐように蛇口を作る。蛇口はノズル伸びるようにシャワーヘッドにしようかな。頭くらいは届くように。ガチャっとはまるように溝をつけてー、次に台を作りまーす。
片側4つ4つに分けたから台は2つずつ。
あ、男女別の囲いも作んなきゃね。蜂蜜入れを作る時に使った端材があったな。異空間から端材を出すと、思ったより大量にある。
んーーー。ステンレスの風呂やっぱやめて、檜の雰囲気でも、と端材で四角い
桶と椅子も木を錬成して作る。さて、次は囲いだ。
ふんふふん♪鼻歌歌いながらどんどん凝った作りにする。
楽しい。ミニチュア風呂作成、楽しい。魔法で
やっぱり魔法最高。
今度こそ魔水晶入れて発動!と横に無造作に置いておいた魔水晶を持つ。
「あ、小粒だからこれちょーどいいわ。」
なんだよ小粒かよ、と思ってたけど縮小版にはちょうどよかった。結果オーライライライラライ♪
「ポポイ、とな♪」
文字通りポイッと魔水晶ポケットにセット。
キラリ、と魔水晶が光り、線を伝って温水がそれぞれの魔法陣へ。ミニチュアの風呂を満たし、蛇口シャワーから温水が出て、桶を満たす。風呂からも桶からも水が溢れ出すけど、ちゃんと微妙に傾斜つけたり溝を作って魔法陣へ戻るようになっている。洗浄効果あるからこれが汚れた水でも平気だ。
ウットリと完成品を眺めて、午前中を過ごした。水の流れっていつまでも見てられる不思議。
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