一人目
私はとにかく人を疑わない人間でございました。人を信じて疑わない。
それと共にどんな罵詈雑言も全て身に受けておりました。
とにかく不器用な女だったのです。
苦手な鬼ごっこでも、絶対に捕まらないという相手の余裕から私はいつも鬼。
汗をダラダラと垂れ流し、服を湿らせながらも嫌われたくない一心で一生懸命走っておりました。
そんな私が高校生の頃です。SNSを初めて利用できた喜びで楽しくインターネットをしておりました。そんな時に甘い言葉を囁く輩がおりました。今思えばそんな人について行くやつは本来いなかったことでしょう。
しかし恋愛を知らなかった私はそれすらも信じてしまったのです。
なんて馬鹿なことでしょう。始まりのこれが全てをとち狂わせるとも知らずに。
哀れな馬鹿な女でしょう。笑ってください。
私の初めてのお付き合いしたお方は女性の方でした。
最初は男だと偽られていましたが、女だと明かされたあとも私はその人が好きに変わりはなくお付き合いをしていました。
その人は所謂、心を病まれているお方でした。
何かある度に自分を痛めつけては写真に撮り送ってくる方でした。
私はとにかく痛いのが嫌いで、何故そんなことをするのか分かりませんでした。
だって考えてもみてください。
自分の肌に刃を当て滑らせる行為。痛みを感じながらなぜ安心するのか。
私に分かるわけもございませんでした。
その度に辞めて欲しいと伝えていました。
今思えば、なんて残酷なことを言っていたのかと思いますが。
私は信じて疑わない人間ではありましたが、その分我も強い女でした。
他の女と絡むのが嫌だ。
他の女に取られてしまうのではないか。
他の女に気を逸らしてしまうのではないか。
他の人と遊びに行かないで欲しい。
ネット用語で言うメンヘラでした。
さぞ面倒くさい女とお思いでしょうが、自慢ではないですが私はすこぶる見た目が悪かったのです。
肉付きがいいという言葉では表せないようなでっぷりとした体はまさにみっともない風貌でした。髪の毛にも気を使わず、ボサボサの髪の毛に、瞼は肉がつき重く目つきも悪かったのです。
鼻は団子を潰したような形状に顎にも肉がついて、とてもじゃないけれど可愛いとは言えませんでした。
だからこそ可愛い女の子に取られるのが怖かったのです。
この時の私はメンヘラである自覚をしていませんでした。
しかし私は彼女を愛していました。
ある時トークのアイコンが切り替わるのを見ました。
首元の複数にできた小さなアザ。
最初は怪我をしたのだと焦り、大丈夫?と声をかけていたものです。
それがキスマークだとも知らずに。
私がどれだけ無知だったのか、自分を情けなく思います。
「もう__とは付き合えない。他に彼女が出来た」
私は笑顔のままそれを見つめ固まっていました。訳が分からずその後は部屋にあるもの全てを薙ぎ倒して暴れていました。
不細工な顔を涙で腫らして余計に不細工になっていました。いうなれば肉がんものような。
結局話せるツールは全てブロックされ話せなくなりました。
私はその時独りを感じました。
友達に裏切られても信じることを諦めず生きてきた私はこの時から誰も信用できなくなりました。
人の好意も何もかも。
でもそもそも考えてもみてください。
私はそもそも人を信用してなかったから、相手の好意を信じられず相手との関係を終わらせてしまったのではないか。
考えてみれば簡単な話です。私は人を信用していると言いながら何も信用してなかったのです。
その時から私はカッターを手に肌を滑らせるようになりました。
この時からではなく、きっと私は自分を偽り続け病んでいたのかもしれません。
私の一人目の御相手はこうして呆気なく終わってしまったのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます