第26話 クフ王のピラミッド
タハリール広場のそばにある激安のホテルにチェックインした。
部屋がビルの7階にあるのに、エレベーターは壊れていて動かなかった。
階段を歩いて上るしかない。
シャワーはお湯が出なかった。ぬるい水が流れるだけで、いっこうに温まらない。
宿泊代が安いので、このくらいは我慢しなくてはならない。
シーツが清潔なのが救いだった。
明日はピラミッドを見にギザへ行こうと決めて、眠りについた。
翌朝、早くから開いているコシャリ屋を見つけて入った。
コシャリとは日本におけるラーメンのようなエジプトの国民食だ。イタリア料理とインド料理の両方の影響を受けて、エジプトで独自に発展した軽食。
米、マカロニ、レンズ豆、ひよこ豆に、トマトソース、辛ソース、酢、オニオンフライを好みの量かけて、ぐちゃぐちゃに混ぜて食べる。トマトと酢の酸味、スパイスが効いた辛味、サクサクの揚げた玉ねぎの甘味が絡まったカオスな味で、けっこう美味しい。
昨日食べた薄味のターメイヤとモロヘイヤスープよりもずっと口に合った。
朝ごはんを済ませ、ミネラルウォーターを買い、準備万端整えた。
タハリール広場のバスターミナルでピラミッド方面行きのバスに乗る。地元民と観光客でぎゅうぎゅうに混んでいた。
ギザまで約1時間かかるようだ。
わたしは立ちっぱなしで耐えた。ギザまで行く人が多いらしく、座席はほとんど空かない。
バスの終点でぞろぞろと乗客が降りる。かなり疲れた。
眼前に広がっている風景は、黄土色の砂漠と3大ピラミッド。
大きい。これほど大きな人工建築物は見たことがない。
ピラミッドエリア入場チケットを買って、砂塵を踏みしめ、一番手前にあるクフ王のピラミッドに近づいていった。
その後方にはカフラー王とメンフラワー王のピラミッドが建っている。
クフ王のピラミッドは紀元前2550年頃に建設された。
3大ピラミッドの中で、最大で最古のものだ。
高さ146メートルの巨大建造物で、重さ2.5トンの石灰岩が約230万個も積み上げられている。
紀元前5世紀に生きたギリシアの歴史家ヘロドトスは、クフ王が奴隷10万人を使って、20年かけて建造したと書き残している。
外見は四角錐型とシンプルな形状だが、内部構造は複雑で、回廊がめぐらされ、王の間や女王の部屋などの空間があり、さらには地下通路や地下室まで設けられている。その工法は現代に至っても謎らしい。
古代に超文明があったとか、宇宙人のしわざだとかいう説もある。
紀元前2500年頃に3つの大ピラミットが相次いで建設されたが、以後、これほど巨大なピラミッドは建造されていない。
技術が失われたのか、財力がなかったのか。
ピラミッドは謎だらけである。
遠くから見ると美しい四角錐だったが、近づくと横面が見えなくなって二等辺三角形になった。
真下から見上げると、巨大石で形づくられた斜面に圧倒された。とにかくでかい。
ピラミッドの周りに、いくつか崩れ落ちた巨石があった。
そのひとつだけでも、わたしの首あたりまでの高さがある。こんな重たい石をどうやって運搬し、高く積んだのか。
竣工時にはすべすべの化粧石が3大ピラミッドの全面を覆い、白く光り輝いていたと考えられている。化粧石は現在、カフラー王のピラミッドの頂上付近にわずかに残っているだけだ。
わたしはエリアチケットとは別料金を払って、クフ王のピラミッドの内部に入った。
正規の入口は封鎖されていて、盗掘のために開けられたという穴から入場する。
設置されている照明を頼りに強盗のトンネルを進んでいくと、やがて壁面が滑らかになった。本来の通路につながったのだ。
グランドギャラリーと呼ばれる天井の高い通路を経て、赤色花崗岩で覆われた王の間へと到達した。
クフ王は世界最大のピラミッドをなんのためにつくったのだろうか。
陵墓との説が有力だが、それにしても壮大すぎる。
ファラオはピラミッドパワーにより永遠の命を実現しようとしたとも言われているが、王の間は盗掘されていて、がらんどうだ。棺もミイラも副葬品も残っていない。
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