祭典(さいてん)
時代は大昔。欧州のとある国での出来事。
大きな会場で祭典が催され、大勢の参加者が集まった。
集まった男たちが、力の限りに体を動かした。
走る、投げる、取っ組み合う。
それを観衆が声援を投げつつ、応援をしていた。
「がんばれ!」
会場にいる皆が、「平和」の空気を味わっていた。
「優勝は、〇〇出身のA!素晴らしい頑張りを見せてくれて、ありがとう!」
審判が優勝した選手に冠を授けると、会場は大盛り上がり。
彼は拍手喝采で、観衆に迎えられた。
「おい、すごかったな。でも、次は優勝をいただくからな」
他国の参加者Bが、優勝した男に絡んできた。
だが、その言葉には妬みが感じられなかった。次の祭典に向けて、抱負を述べたに過ぎないようだ。
「楽しみにしてるよ。ああ、できれば……」
やや間があってから、Aはこう続けた。
「次も、この会場で会いたい。戦場でお前とは出会いたくないよ」
しばしの沈黙。それを、Bが打ち破った。
「おいおい、優勝者が悲しい顔をするなよ。笑顔で終わろうぜ。大丈夫さ、4年後もここで会えるって」
「そうだね、元気づけてくれてありがとう。では……また4年後、ここで」
「おう、またな!」
血を流すのではなく、汗をながして、互いを称えあう。
誰が考えたかは分からないが、古代に「平和の祭典」を発明した人は、誰よりも「平和」を愛した人物だったと思いたい。
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