少年達の異能戦争

胡麻兄さん

プロローグ

第1話 かすかな記憶

 消毒液の匂いが少し鼻を突きさす病室にまだ年端もいかない少年がぼんやりと佇んでいた。


 少年はなぜ自分がここにいるのか、自分は何者なのかもさえ知らない。当然だ。彼にはがないのだから。


 仮に彼の名を知っているものが彼の名を呼んだとしても、この少年は反応することさえかなわないのだ。


 そしてさらに奇妙なことが、この少年のことを知っているものが誰一人としていないことである。


 誰かが連れてきたというわけではなく、病院の人たちでさえこの少年がここに来た経緯を知る者はいない。ただ、さも元からいたように気づいた時にはにいたのだ


 しばらくすると疲れたのか少年は眩しいくらいに白いシーツの中にもぐりこんだ。


 当然だろう。目の前に広がる無機質な病室、鼻を突きさす消毒液の香り、外から聞こえるあわただしそうな看護婦たちの声、そのすべてが少年にとって未知の世界なのだから。


 しばらくシーツの心地いい感触を楽しんでいたが、その内だんだんと眠りについていった。


 この少年の行く末は、今はまだ誰も知らない......


 

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