ウェブ小説に狂った男

まるっこ

第1章 人気ウェブ作家

プロローグ(改定)

 鏡に映る姿は、そう悪いものではなかった。

 

 でも、やはりスーツ姿はどこかぎこちない。25歳というには、すこし幼いか……。

 この前、久々に会った地元の友人たちは驚くほど大人びていて、自分が友人たちより二年長く学生だった事を痛感させられた。

 

 それでも伊達メガネが少しだけ、大人びた雰囲気を出してくれている。

 

 今日は、自宅からの直行だ。初めて担当を一人で訪れる。

 担当人物の情報は必要最低限しか与えられていない。先入観を避け、自分の目で見て話し、関係性を構築する。上層部のその方針のもとに。


 名刺は持ったか? 真木はそう己に問いかけ、胸ポケットから名刺ケースを取り出す。

 

「KADOYAMA出版 編集部 真木さとみ」その字面が、少し照れくさい。


 もう一度、玄関の姿見鏡で確かめる。

 悪くない。いかにも駆け出しの編集者だ。


 真木は自分に言い聞かせるように頷き、玄関を出た――。

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