第13話

 書いても書いても、何をしても、更新ごとに絶望的な閲覧数が並んだ。

 自分はこんなに楽しく書いてるのに……。自分の好きをふんだんに詰め込んでいるのに……。

 そう思いながら彼は幾度かはPCの前で、白目を向いて失神した事もあったかもしれない。


 赤いインジケーターが絶望的に足りない――。


 灯れ! 灯れ! 灯れ! ベルマークを見つめ、狂ったようにページを更新する。

 

 その状態が、六地蔵をさらに愚かな行為に走らせた。

 「自分の作品の解説」だ――。

 

 「君は小説が好きか?」不意に教授が、真木に問いかけた。


 教授の話に聴き入っていた真木は、慌てて「はいッ、好きです」と答えた。

 おそらくは、自作の解説……? という真木の表情を、教授は読み取ったのだろう。


 教授は小さく頷き、話を続けた――。


 私も今は医学書や論文ばかりだが、若い頃には小説もよく読んだ、小説が好きなら君もよくわかるだろう。作者自身が読者に解説するというのが如何に愚かな事か。

 

 六地蔵はそれを始めた。自分の作品の世界観や登場人物の隠れた魅力を自分で語りだした。

「拙作の✕✕君は実はこういう魅力がありまして……拙作の世界観としましては……」というように。

 

 だが、それは読者が読み取るものだ。自由に想像をふくらませてね。

 作者が読者の解釈や想像に介入する。普通ならそんな愚かな事はしない。

 だが、六地蔵は、それが愚かな事だと認識できない領域に入ってしまっていた。


 すべては自分の書いた小説を、もっと誰かに読んでもらいたいという欲求から来ている。

 だが、現実がついてこない。書いても書いても、どれだけ労力を費やしても、宣伝しても解説しても、何をしても自分の作品に人が寄り付かない。


 六地蔵は心から渇望した。赤いインジケーターが欲しい、と。

 

 その頃から、精神の均衡が如実に壊れていく。


 それはリアルな生活空間にまで波及した――。

 

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