異世界の踊り子

七星北斗(化物)

1.踊り子を待つ。

 褐色の肌に幼さの残る顔、細い肢体。しかし彼女は誰よりも妖艶に、ただ美しく舞う。


「私は踊ることしかできないから」


 春から踊り始めて、もう秋。少しばかり寒い。


 行商人の荷台を借りて、街から街へ旅をする。酒場では舞姫と呼ばれて評判が立っていた。


 仕事服は、民族衣装をモチーフにしている。薄い透明な生地の羽衣。口元はフェイスベールで隠しており、全体的に露出が多い。


 実入りは少ないが、貯蓄ができるくらいには稼いでいる。


 今日は、お休みの日。自分へのご褒美だと、噂のアイスクリームというモノを食べにきた。


 私の名前はシアン。少食ですが、食べることと踊ることが大好きです。


 アイスクリームというモノは、クリームと呼ばれる植物系魔物の樹液を凍らせたものである。


 木製のスプーンで一口、むむむ……ふむ、これは良いものです。口に入れたら一瞬で溶けて、残ったのは甘さ控えめな蜂蜜のような味。


 しかし蜂蜜と違ってベタつきません。それに蜂蜜は高級品です。このアイスクリームの十倍の値段はします。


 アイスクリームを堪能した私は、観光気分で街を食べ歩きました。


 その中でもナバの鳥串、アイラの実、サンタオレンジジュースは別格でした。


 ナバと呼ばれる村で育った若鳥を、甘辛いタレに漬けて焼いたもの。


 アイラの実は、三角形の変わった果物。食感が果物とは思えないほど柔らかく、種まで食べられる。


 サンタオレンジという、太陽の光をたくさん浴びたオレンジ色の果物を、絞った飲み物がサンタオレンジジュースである。


 酸っぱさが強いが、そこに甘さが混ざってスッキリした後味を残す。


 今日と明日は、酒場の改装の為、お仕事はお休みだったのだ。


 明日はどうしようかな?


 新しい衣装を裁縫してもいいし、踊りの鍛練でもいいけど。


 だけど、それではいつもと変わらないよね。

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異世界の踊り子 七星北斗(化物) @sitiseihokuto

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