創滅滅戦

白銀優真

プロローグ

 かつて人は星のあらゆる場所で繁栄していた。星の資源を使い豊かな生活を謳歌していた。いつまでも続くと思われた人の繁栄は突如現れたたった一つの種族によって、他の多くの生物共々、壊された。人々は科学の力と兵器によって抵抗したが彼らの前では無意味であった。


 その種族は人の言葉を話し、しかし人とは似ても似つかない形をし、人々を蹂躙していった。彼らは自らを魔族と呼び、この星の頂点に立つ種族だと宣言した。


 彼らと人間の最大の違いは「魔力」だった。その異能は人に理解できるものではなく、早々に絶望に陥れた。


 しかし生物は時を経て成長し、環境に順応するために進化していく。衰退の一途を辿って行った人類だったが、突如人の子に魔力を持って子が数人産まれた。その全てが女の子でありその時はまだ、日本と呼ばれていた国で産まれた。人でありながら魔法を行使する彼女たちは「魔法使い」と呼ばれた。彼女たちは魔力を使い結界を作り出した。それが現代の人間界である。


 その後、続々と魔力を持つ人が産まれ、魔族にもある程度対抗できるようになった。今ではほぼ全ての人類が魔力を持っている。結界を越えてやってくる魔族を倒す人達は退魔士たいましと呼ばれ日夜魔族と戦い続けている。



_____________________



人間界のある街。空はまだ明るく、普段なら人が多く交わっているだろう。しかし辺りには血を流し、倒れる人、刻まれた手、足、頭などが転がっている。そしてそれらをひとつひとつ食い散らかす怪物がいる。それこそが魔族だ。


「ひひひ、人はうまいなぁ。もっと食って強くなってやるぜぇ」

不気味な笑い声を出す魔族はおいしそうに人の肉を頬張る。またひとつ人を食べようとした瞬間、後ろから迫る気配を感じ取った。

「っ!!」

怪物はとっさに避けようとしたが、間に合わず袈裟斬りにされた。


「退魔士どもかっ!」

怪物が後退しながら声を荒げる。斬られたは肉体くっついて固まった。目の前には灰色の髪をし、眼鏡をかけた少年と青色の髪と瞳の少女が立っている。灰色の少年の剣にはわずかに血がついている。


「大した強さじゃない。七級相当の魔物だろうな。初陣としてはぴったりの相手だ」

「じゃあ、私達だけでも倒せそうだね」

「くそっ!」

怪物はなんとか逃げる隙を見つけようとするが、さらに後ろからもう一つの気配がする。

「っもう一匹!」

今度は振り向き拳を食らわせてやろうとした怪物だが振り向いたと同時に右腕を切られてしまった。その刃には炎が纏わっている。炎によって斬られた腕は焦げ落ち、自分の肉体も燃え上がる。

「ぎぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁ!」

凄まじい悲鳴をあげる怪物に再び炎の斬撃が襲いかかる。二撃目、三撃目、何度も斬撃が繰り返される。魔物は悟った。自分が死ぬまで攻撃が止むことはないと……。

魔物が最期に見たものは自身に純粋な殺意を向けるオレンジ色の髪をした少年だった。

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