第2話 スライムの能力
とりあえず、スライムを捕獲することに成功したものの、いまだに俺の固有スキル『テイマー』の発動条件すら分からない状態だった。
あれから他のスライムも捕まえられるかどうか試してみたが、全く反応なし。スキルが発動するためには捕まえられることのできるモンスターの上限でもあるのか?……だから一回、スライムを捕まえている俺ではもう反応しないとか?ダメだ全くわからん。
そこで完全に行き詰った俺は、とりあえず捕獲に成功した先ほどから俺の後を必死になってついてくるこのスライムの名前でも決めようかと思った。
「スライムの名前か……。ここは安直にアインでいいか」
アインと言えばドイツ語で1を意味する言葉だが、ゲームとかでも名前が何も思い浮かばなかったときは以前から俺はこの名前をつけていた。最初に捕まえたモンスターだからアイン。安直ではあるが……。
「そこのスライム、今日からお前はアインだ」
スライムに話しかけてみる。当然だが、スライムに言葉が通じている様子はない。
スライムがうじゃうじゃいるフィールドでペットのスライムと他の野生のスライムとの区別のために名前に反応してくれたらありがたかったのだが、まあ仕方ないか。
幸いなことにこのスライムは頭にPETと表示されているため、他のスライムとの見分けは簡単につく。俺が視認していれば問題ないか。
あとは……捕まえたモンスターのステータスとか確認できるのか?ゲームとかなら、自分の捕まえたモンスターの能力を確認するのは基本だから知っておきたいんだが……。
しかしどうやって見ればいいのか、全く見当がつかない。俺のステータスを見る時のように矢印のようなものが視認できればいいが、アインを見つめてみても頭にPETと表示されているだけで、それらしきものは見つからない。
この訳の分からない異世界に飛ばされてから、俺はどこかに説明書のようなものがないかと探しまくっていたのだが全くそれらしきものはなく、全て自分で見つけるしかないようだった。
「アイン、すまん。ちょっと失礼するぞ」
言葉は通じていないだろうが、一応アインに断りを入れて、俺はくまなくアインを調べてみることにした。そうすれば突然、アインのステータス画面のようなものが出てくるかもしれないと思ったからだ。
んー、ダメだ。いくらアインを調べても全く出てこない。
精魂尽き果てた俺は座りながらふっと一息ついて上の方をみた。そこにはアインの頭上にPETと表示された文字が見える。俺は何を思ったのか、こんな場所にあるわけないと思いつつもPETと表示されている文字の裏側の方をのぞき込んでみた。すると目を凝らしてみないと良く見えないほど小さく矢印マークがあった。
「何だよ、こんなとこにあったのか……。分かりにくすぎる」
こんなの罠だろ。普通にしてたら絶対見つからないだろこんなん。この異世界をつくった奴はメチャクチャ意地悪に違いない。説明書もなければ、ステータス画面を見るのにも一苦労なのだから……。
文句を言いつつも、俺はアインのステータスを見てみた。
攻撃力1
防御力6
魔法防御力5
魔法攻撃力1
素早さ2
俺はこの世界の強さの基準が未だに良く分かっていない。ステータスの比較対象が俺しかいないから仕方ないことだけれども。
しかしこのステータスを一目見ただけで分かった。絶対弱い。
攻撃力1って……。確かにこのスライムは捕まえる際にも攻撃すらしてこなかったからな……。あとやけに俺のパンチが効かないと思ったら防御力6もあるのか。対して俺の攻撃力は2。どうりであまり効いていなかったわけだ。でも、いくらステータス差があったとはいえ、あまりに頑丈だったこのアイン。もしかして何か特別なスキルでもあるのでは?と考えた俺はスキル欄を見てみた。
固有スキル『スライム』
すると案の定、固有スキルと表示された欄にスキルがあった。
説明を見てみると『物理攻撃を80%軽減することができます。』
このように記されていた。
なるほど……。全くパンチが効かなかった原因がこれか。
ということはこのアイン、物理攻撃にメチャクチャ強いから言葉が悪いが最高の盾になってくれるのでは?そう思い浮かんでしまったが盾にするってのは気が引けるな。
ゲームだったら、罪悪感なく盾にすることだってできたのだろうが、今、目の前にいるアインを見て俺は盾にする気が全く起きなかった。こんな愛くるしい見た目の奴を酷使できない……。
とりあえず、あとは通常のスキル欄でもみてみよう。
スキル欄を見てみると、『変幻自在』という名のスキルがあった。
『姿を自由自在に変えることができます。』と記されている。
なんか使いどころが難しそうなスキルだな……。
とりあえずアインの能力を把握した。戦力を把握した俺は今いる、スライムしか出てこない場所から移動しようと考えていた。もっと強いモンスターを見てみたいと思い始めていたからだ。俺は突如、異世界に飛ばされるというこの奇妙な状況を楽しみ始めていた。
「別の場所に行くか。ついてこいアイン」
アインは俺の後を忠実についてくる。その時俺は、意味不明な世界ではあるが、なんかRPGみたいで面白いななんて考えていた。
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