第一幕 神話オカルト研究会

神話オカルト研究会(1)

 カーテンの隙間から部屋の中を照らす陽光。

 ベッドの上で眠る少年は、額から汗を流し苦しそうに呼吸を繰り返す。


「――っ、あっ、ううっ……。うああっ……!」


 昔の嫌な夢から目覚め飛び起きる少年。汗で寝巻きが肌に張りつき、気持ち悪さを感じながら額の汗を手で拭う。


「またあの夢か……」


 と呼吸を整えぼやく。


 前髪を掻き上げ溜め息を吐くのはこの家の主であり、今年の春から一年遅れて神山学園に入学する逢真夏目おうまなつめだ。細身で黒髪のアホ毛が特徴の少年。


 本来なら一年前に入学するはずだったが、春休み先で起きた交通事故で入学ができなくなった。交通事故で両親を亡くし自身も左足に大怪我を負い、そのリハビリなどで一年見送ることに。そうしてこの春にようやく入学できる。


 ただ夏目は毎日、一年前の事故を夢で見てしまう。今朝も、その夢でうなされていた。本人はあの当時のことをあまり覚えていない。

 気がつけば、病院のベッドの上で目が覚め両親が亡くなったと聞かされた。


「どうして……」


 自分だけが生き残った? と口にしそうになって止める。時計に目をやりのそのそとベッドから下り支度。


 入学式は昨日、今日からは授業が始まる。真新しい制服に袖を通し顔を洗い軽く朝食を済ませ家を出る。杖をつきゆっくり通学路を歩く夏目。

 自宅から学園まで徒歩十五分ほど。しかし、夏目の場合、怪我のこと杖をつきながらの徒歩なので余裕を持って早めに出る。


 神山学園、この神山町にある私立高だ。学園には、理由がない限り原則として部活または委員会に入る校則がある、むろん、夏目も部活に入るつもりでいた。

 アルバイトは学園側に申請すれば問題はない。バイトする学生は、部活や委員会に入らなくてもいいことになっている。が、夏目の足ではバイトは難しい。


 左足に傷を負い、激しい運動はできず日常生活ならばある程度の問題はない。そのため、運動系は論外、季節ごとに駆り出される委員会も無理。


「となると文化系しかないけど、気になる部活なんてなかったし……」


 そうなると自分で新しく部活を作る、しかしそれはそれで面倒くさいと思ってしまう夏目。そんなことを考えながら学園に到着。教室に入り、窓側の一番後の席へ。そこが夏目の席だ。窓辺で後ろ、四方を挟まれず少しは気が楽。


 教室は少々騒がしく、中学からの友人や知り合い、コミュニケーション力がある生徒たちは既に友達に発展、グループが一日で生まれ夏目はその輪に入り損ねた。

 が、本人は気を遣い愛想笑いや相手に合わせずに済むとあまり気にはしていない。とはいえ、三年間ぼっちというのはとまた小さな溜め息が出る。


 こうして、今日から高校生となった夏目の一日が始まりを告げるのだった。







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