偽りの神人 ~神造七代の反逆と創世~

ゆーにゃん

第一章 神殺しと巫女

プロローグ

 横たわる少年の前で燃え盛る炎が視界を赤く染める。


 炎上する車体の中には少年に取って大切な人が――。


 ――グチャ、クチュ。

 咀嚼音と路上に転がる肉塊。体長三メートルは超えるであろう灰色の狼がいた。


「う、うああああああああああああっ!」

「く、くそったれ!」


 ――パンッ、パンッ。

 男の悲鳴と肉塊を喰らう狼に向けて銃を発砲するもう一人の男。しかし、銃弾は狼の肉体を傷つけることはできなかった。

 ギロリ、と発砲した男を睨めつける狼。その口元は赤い液体で汚れ、その隙間から覗く鋭く成人男性の腕並みの太い牙。


「グルルッ」


 唸り声を上げ姿勢を低く、銃弾を発砲してきた男に飛び掛かる。狼の牙は簡単に男の体に突き刺さり噛み千切る。男の口から血反吐と肉体から血飛沫が舞う。


 また新たに肉塊が増える。


 路上にうつ伏せで倒れ、顔だけを動かし上げその光景を眺める少年。その近くに同じく横たわる傷ついた少女が一人。


「し、死にたくない! た、助けてくれぇぇええええええええええっ!」


 仲間が喰われる瞬間を目の当たりに情けない声を出し逃げ出す最後に残った男。悲鳴を上げる男に狼は、一切の躊躇いも情け容赦なく襲い掛かる。


 跳躍し距離を詰め前足で横殴り、男の体はボールのように軽々と吹き飛び何度も路上をバウンドし動かなくなる。だがまだ息はあるが、狼は無慈悲に死を与える。

 動けない脇腹に前足を置き爪を立て、体重を掛けて皮膚を裂き肉を抉り内臓を引き摺り殺す。それだけでは終わらず、大きな口を開け血に濡れた牙でまた咀嚼。


 今、起きている現状の何一つ赤く染め上げる光景に少年は理解できずにいた。


「はっ、はぁっ、はぁっ、はっ……」


 浅い呼吸を繰り返す。

 そして、脳はショートを起こし意識を失った――。







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