第4夜「共依存」

 昔から母は、食器棚にぎゅうぎゅうに華奢なグラスを飾り立てては、月に1~2度の頻度で手をすべらして割ってしまうということを繰り返している。


 わたしは事あるごとにいさめたが、母はまた新しいグラスを仕入れてきては棚に詰め込む。



 不安定なグラスの群れに恐怖が高まったわたしは、巨大なホースで放水して(もちろん周囲には一滴もこぼさないように巧みに)棚の中をぐしゃぐしゃにする。



 誰かが耳元で言った。


「とりかえしがつかない」




 おわり



 

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